実用発電用原子炉に使用する燃料体の技術基準に関する規則

平成二十五年原子力規制委員会規則第七号
実用発電用原子炉に使用する燃料体の技術基準に関する規則
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第四十三条の三の十二第三項第二号の規定に基づき、実用発電用原子炉に使用する燃料体の技術基準に関する規則を次のように定める。
(適用範囲)
第一条 この規則は、実用発電用原子炉に使用する燃料体について適用する。
(定義)
第二条 この規則において使用する用語は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律において使用する用語の例による。
 この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 「燃料材」とは、熱を発生させるために成形された核燃料物質をいう。
 「燃料被覆材」とは、原子核分裂生成物の飛散を防ぎ、かつ、冷却材による侵食を防ぐために燃料材を覆う金属管をいう。
 「端栓」とは、燃料被覆材の両端を密封するために成形された金属部品をいう。
 「燃料要素」とは、燃料材、燃料被覆材及び端栓からなる炉心の構成要素であって、構造上独立の最小単位であるものをいう。
 「黒鉛スリーブ」とは、フィン付き燃料要素の荷重を支え、かつ、冷却材の流路を確保するためにマグネシウム合金燃料被覆材の外側に設けられる黒鉛製の円筒をいう。
(特殊な加工による発電用原子炉に使用する燃料体)
第三条 特別の理由により原子力規制委員会の認可を受けた場合は、この規則の規定によらないで燃料体の加工をすることができる。
 前項の認可を受けようとする者は、その理由及び燃料体の加工の方法について記載した申請書に関係図面を添付して申請しなければならない。
(金属ウラン燃料材)
第四条 金属ウラン燃料材は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 燃料材の軸は、著しく湾曲していないこと。
 次の表の上欄に掲げる元素を含有する場合における当該元素の含有量の全重量に対する百分率の値は、それぞれ同表の下欄に掲げる値であること。
アルミニウム
〇・〇八以上〇・一六以下
ほう素
〇・〇〇〇〇一二以下
炭素
〇・二〇以下
クロム
〇・〇一一以下
〇・〇〇二〇以下
コバルト
〇・〇〇〇五以下
〇・〇一〇以上〇・〇五〇以下
ふっ素
〇・〇一〇以下
水素
〇・〇〇〇五以下
マンガン
〇・〇〇二五以下
ニッケル
〇・〇一五以下
窒素
〇・〇一五以下
酸素
〇・〇五〇以下
けい素
〇・〇一〇以下
トリウム
〇・〇〇一〇以下
 組織の状態は、正常であること。
 結晶粒度は、実用上差し支えがないものであること。
 割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
 中空のものであってその両端に端プラグを溶接したものの溶接部は、次に適合すること。
 ブローホール、アンダーカット等で有害なものがないこと。
 中空部に封入されているヘリウムの漏えい量が著しく大きくないこと。
(二酸化ウラン燃料材)
第五条 二酸化ウラン燃料材は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 次の表の上欄に掲げる元素を含有する場合における当該元素の含有量のウランの含有量に対する百分率の値は、それぞれ同表の下欄に掲げる値であること。
炭素
〇・〇一〇以下
ふっ素
〇・〇〇一五以下
水素
〇・〇〇〇二以下
窒素
〇・〇〇七五以下
 ウラン二三五の含有量のウランの含有量に対する百分率の値の偏差は、著しく大きくないこと。
 ペレット型燃料材にあっては、ペレットが次に適合すること。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 密度の偏差は、著しく大きくないこと。
 表面に割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
 ガドリニウムを添加していないものにあっては、次に適合すること。
 ウランの含有量の全重量に対する百分率の値は、八十七・七以上であること。
 酸素の原子数のウランの原子数に対する比率の値は、一・九九以上二・〇二以下であること。
 ガドリニウムを添加したものにあっては、次に適合すること。
 ウランの含有量の全重量に対する百分率の値は、実用上差し支えがないものであること。
 酸素の原子数のウランの原子数に対する比率の値は、実用上差し支えがないものであること。
 ガドリニウムの含有量の全重量に対する百分率の値の偏差は、著しく大きくないこと。
 ガドリニウムの均一度は、実用上差し支えがないものであること。
(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料材)
第六条 ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料材は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 各元素の含有量の全重量に対する百分率の値の偏差は、著しく大きくないこと。
 酸素の原子数のウラン及びプルトニウムの原子数の合計に対する比率の値は、実用上差し支えがないものであること。
 ウラン二三五、プルトニウム二三九及びプルトニウム二四一の含有量の合計のウラン及びプルトニウムの含有量の合計に対する百分率の値の偏差は、著しく大きくないこと。
 プルトニウムの均一度は、実用上差し支えがないものであること。
 ペレット型燃料材にあっては、ペレットが次に適合すること。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 密度の偏差は、著しく大きくないこと。
 表面に割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
(マグネシウム合金燃料被覆材)
第七条 マグネシウム合金燃料被覆材は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 被覆材の軸は、著しく湾曲していないこと。
 次の表の上欄に掲げる元素を含有する場合における当該元素の含有量の全重量に対する百分率の値は、それぞれ同表の下欄に掲げる値であること。
アルミニウム
〇・六五以上〇・九〇以下
ベリリウム
〇・〇〇二以上〇・〇三〇以下
カルシウム
〇・〇〇八以下
〇・〇〇六以下
けい素
〇・〇一〇以下
亜鉛
〇・〇一五以下
 組織の状態は、正常であること。
 結晶粒度は、実用上差し支えがないものであること。
 割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
 フィン付きのものにあっては、フィンの形状が正常であり、かつ、フィンの並びが整一であること。
(ジルコニウム合金燃料被覆材)
第八条 ジルコニウム合金燃料被覆材は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 被覆材の軸は、著しく湾曲していないこと。
 各元素の含有量の全重量に対する百分率の値は、日本工業規格H四七五一(一九九八)「ジルコニウム合金管」の「四 品質」の表二及び表三に規定する値であること。
 日本工業規格H四七五一(一九九八)「ジルコニウム合金管」の「附属書三 水素化物方位試験方法」又はこれと同等の方法によって水素化物方位試験を行ったとき、水素化物方向性係数が〇・四五を超えないこと。
 日本工業規格H四七五一(一九九八)「ジルコニウム合金管」の「附属書四 超音波探傷試験方法」又はこれと同等の方法によって超音波探傷試験を行ったとき、対比試験片の人工傷からの欠陥信号と同等以上の欠陥信号がないこと。
 表面に割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
 表面の粗さの程度は、実用上差し支えがないものであること。
 日本工業規格H四七五一(一九九八)「ジルコニウム合金管」の「附属書二 腐食試験方法」又はこれと同等の方法によって腐食試験を行ったとき、表面に著しい白色又は褐色の酸化物が付着せず、かつ、腐食質量増加が三日間で二十二ミリグラム毎平方デシメートル以下又は十四日間で三十八ミリグラム毎平方デシメートル以下であること。
 再結晶焼きなましを行ったものにあっては、次に適合すること。
 日本工業規格H四七五一(一九九八)「ジルコニウム合金管」の「附属書一 結晶粒度試験方法」又はこれと同等の方法によって結晶粒度試験を行ったとき、結晶粒度が結晶粒度番号七と同等又はそれより細かいこと。
 日本工業規格Z二二四一(一九九八)「金属材料引張試験方法」又はこれと同等の方法によって引張試験を行ったとき、引張強さ、耐力及び伸びが日本工業規格H四七五一(一九九八)「ジルコニウム合金管」の「四 品質」の表四に規定する値であること。
十一 応力除去焼きなましを行ったものにあっては、日本工業規格Z二二四一(一九九八)「金属材料引張試験方法」又はこれと同等の方法によって引張試験を行ったとき、引張強さ、耐力及び伸びが必要な値であること。
(マグネシウム合金端栓)
第九条 第七条(第二号、第四号、第五号及び第八号を除く。)の規定は、マグネシウム合金端栓に準用する。この場合において、同条第六号中「割れ」とあるのは「表面に割れ」と読み替えるものとする。
(ジルコニウム合金端栓)
第十条 再結晶焼きなましを行ったジルコニウム合金端栓は、日本工業規格Z二二四一(一九九八)「金属材料引張試験方法」又はこれと同等の方法によって次の表の上欄に掲げるいずれかの試験温度において引張試験を行ったとき、引張強さ、耐力及び伸びが同欄に掲げる試験温度の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値であるものでなければならない。
温度
引張試験
引張強さ
ニュートン毎平方ミリメートル
耐力
ニュートン毎平方ミリメートル
伸び
パーセント
十度以上
三十五度以下
四百十五以上
二百四十以上
十四以上
三百十六度
二百十五以上
百五以上
二十四以上
 応力除去焼きなましを行ったジルコニウム合金端栓は、日本工業規格Z二二四一(一九九八)「金属材料引張試験方法」又はこれと同等の方法によって引張試験を行ったとき、引張強さ、耐力及び伸びが必要な値であること。
 第八条(第二号、第四号、第五号、第八号、第十号及び第十一号を除く。)の規定は、ジルコニウム合金端栓に準用する。ただし、第八条第三号の日本工業規格H四七五一(一九九八)「ジルコニウム合金管」の「四 品質」の表三に掲げるニオブ及びカルシウムを除く。
(黒鉛スリーブ)
第十一条 黒鉛スリーブは、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 各元素の含有量の全重量に対する百分率の値の偏差は、著しく大きくないこと。
 表面に割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
 試料の軸方向に荷重を加えて圧縮して破壊したとき、これに要した荷重は、使用中に黒鉛スリーブに加わる最大荷重より大きいこと。この場合において、試験は、同一の条件で製造されたものから採取された適当な数の試料について行うものとする。
(その他の部品)
第十二条 燃料材、燃料被覆材、端栓及び黒鉛スリーブ以外の燃料体の部品は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 表面に割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
 支持格子、上部支持板、下部支持板、ウォータロッド、制御棒案内シンブルにあっては、次に適合すること。
 各元素の含有量の全重量に対する百分率の値の偏差は、著しく大きくないこと。
 日本工業規格Z二二四一(一九九八)「金属材料引張試験方法」又はこれと同等の方法によって引張試験を行ったとき、引張強さ、耐力及び伸びが必要な値であること。
(燃料要素)
第十三条 燃料要素は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 燃料要素の軸は、著しく湾曲していないこと。
 表面に割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
 日本工業規格Z四五〇四(一九九三)「放射線表面汚染の測定方法」における間接測定法(フィン付きのものにあっては、比例計数管法)又はこれと同等の方法によって測定したとき、表面に付着している核燃料物質の量が〇・〇〇〇〇四ベクレル毎平方ミリメートル(フィン付きのものにあっては、一燃料要素当たり〇・七ベクレル)を超えないこと。
 ヘリウム漏えい試験を行ったとき、漏えい量が一億分の三百四メガパスカル立方ミリメートル毎秒(フィン付きのものにあっては、百万分の百五十二メガパスカル立方ミリメートル毎秒)を超えないこと。
 溶接部にブローホール、アンダーカット等で有害なものがないこと。
 フィン付きのものにあっては、フィンの形状が正常であり、かつ、フィンの並びが整一であること。
 部品の欠如がないこと。
(燃料集合体)
第十四条 燃料要素の集合体である燃料体は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
 各部分の寸法の偏差は、著しく大きくないこと。
 表面に割れ、傷等で有害なものがないこと。
 表面に油脂、酸化物等で有害な付着物がないこと。
 部品の欠如がないこと。
(電磁的記録媒体による手続)
第十五条 第三条第二項の申請書の提出については、当該申請書の提出に代えて、当該申請書に記載すべきこととされている事項を記録した電磁的記録媒体(電磁的記録(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)に係る記録媒体をいう。以下同じ。)及び別記様式の電磁的記録媒体提出票を提出することにより行うことができる。
附 則
 この規則は、原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号)附則第一条第四号に掲げる規定の施行の日(平成二十五年七月八日)から施行する。
 この規則の施行の際現に発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令(昭和四十年通商産業省令第六十三号)第二条第一項の規定によりされている認可は、第三条第一項の規定によりされた認可とみなす。
 この規則の施行の際現に発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令第二条第二項の規定による認可についてされている申請は、第三条第二項の規定による認可についてされた申請とみなす。
附 則 (令和元年七月一日原子力規制委員会規則第三号) 抄
この規則は、不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行の日(令和元年七月一日)から施行する。
附 則 (令和二年一月二三日原子力規制委員会規則第三号) 抄
(施行期日)
第一条 この規則は、原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律(平成二十九年法律第十五号)第三条の規定の施行の日(令和二年四月一日)から施行する。
(実用発電用原子炉に使用する燃料体の技術基準に関する規則の廃止)
第二条 実用発電用原子炉に使用する燃料体の技術基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第七号)は、廃止する。
別記様式(第15条関係)