土地基本法

土地基本法
(平成元年十二月二十二日法律第八十四号)


最終改正:平成一一年一二月二二日法律第一六〇号


 第一章 総則(第一条―第十条)
 第二章 土地に関する基本的施策(第十一条―第十八条)
 第三章 国土審議会の調査審議等(第十九条)
 附則

   第一章 総則

第一条  この法律は、土地についての基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の土地についての基本理念に係る責務を明らかにするとともに、土地に関する施策の基本となる事項を定めることにより、適正な土地利用の確保を図りつつ正常な需給関係と適正な地価の形成を図るための土地対策を総合的に推進し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

第二条  土地は、現在及び将来における国民のための限られた貴重な資源であること、国民の諸活動にとって不可欠の基盤であること、その利用が他の土地の利用と密接な関係を有するものであること、その価値が主として人口及び産業の動向、土地利用の動向、社会資本の整備状況その他の社会的経済的条件により変動するものであること等公共の利害に関係する特性を有していることにかんがみ、土地については、公共の福祉を優先させるものとする。

第三条  土地は、その所在する地域の自然的、社会的、経済的及び文化的諸条件に応じて適正に利用されるものとする。
 土地は、適正かつ合理的な土地利用を図るため策定された土地利用に関する計画に従って利用されるものとする。

第四条  土地は、投機的取引の対象とされてはならない。

第五条  土地の価値がその所在する地域における第二条に規定する社会的経済的条件の変化により増加する場合には、その土地に関する権利を有する者に対し、その価値の増加に伴う利益に応じて適切な負担が求められるものとする。

第六条  国及び地方公共団体は、第二条から前条までに定める土地についての基本理念(以下「土地についての基本理念」という。)にのっとり、土地に関する施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有する。
 国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、土地についての基本理念に関する国民の理解を深めるよう適切な措置を講じなければならない。

第七条  事業者は、土地の利用及び取引(これを支援する行為を含む。)に当たっては、土地についての基本理念に従わなければならない。
 事業者は、国及び地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力しなければならない。

第八条  国民は、土地の利用及び取引に当たっては、土地についての基本理念を尊重しなければならない。
 国民は、国及び地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力するように努めなければならない。

第九条  政府は、土地に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。

第十条  政府は、毎年、国会に、地価、土地利用、土地取引その他の土地に関する動向及び政府が土地に関して講じた基本的な施策に関する報告を提出しなければならない。
 政府は、毎年、前項の報告に係る土地に関する動向を考慮して講じようとする基本的な施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
 政府は、前項の講じようとする基本的な施策を明らかにした文書を作成するには、国土審議会の意見を聴かなければならない。

   第二章 土地に関する基本的施策

第十一条  国及び地方公共団体は、適正かつ合理的な土地利用を図るため、人口及び産業の将来の見通し、土地利用の動向その他の自然的、社会的、経済的及び文化的諸条件を勘案し、必要な土地利用に関する計画(以下「土地利用計画」という。)を策定するものとする。
 前項の場合において、国及び地方公共団体は、地域の特性を考慮して良好な環境に配慮した土地の高度利用、土地利用の適正な転換又は良好な環境の形成若しくは保全を図るため特に必要があると認めるときは土地利用計画を詳細に策定するものとし、地域における社会経済活動の広域的な展開を考慮して特に必要があると認めるときは土地利用計画を広域の見地に配慮して策定するものとする。
 第一項の場合において、国及び地方公共団体は、住民その他の関係者の意見を反映させるものとする。
 国及び地方公共団体は、第一項に規定する諸条件の変化を勘案して必要があると認めるときは、土地利用計画を変更するものとする。

第十二条  国及び地方公共団体は、土地利用計画に従って行われる良好な環境に配慮した土地の高度利用、土地利用の適正な転換又は良好な環境の形成若しくは保全の確保その他適正な土地利用の確保を図るため、土地利用の規制に関する措置を適切に講ずるとともに、土地利用計画に係る事業の実施その他必要な措置を講ずるものとする。
 国及び地方公共団体は、前項の措置を講ずるため必要な公有地の拡大の推進等公共用地の確保に努めるものとする。
 国及び地方公共団体は、第一項の措置を講ずるに当たっては、需要に応じた宅地の供給の促進が図られるように努めるものとする。

第十三条  国及び地方公共団体は、土地の投機的取引及び地価の高騰が国民生活に及ぼす弊害を除去し、適正な地価の形成に資するため、土地取引の規制に関する措置その他必要な措置を講ずるものとする。

第十四条  国及び地方公共団体は、社会資本の整備に関連して土地に関する権利を有する者が著しく利益を受けることとなる場合において、地域の特性等を勘案して適切であると認めるときは、その利益に応じてその社会資本の整備についての適切な負担を課するための必要な措置を講ずるものとする。

第十五条  国及び地方公共団体は、土地についての基本理念にのっとり、土地に関する施策を踏まえ、税負担の公平の確保を図りつつ、土地に関し、適正な税制上の措置を講ずるものとする。

第十六条  国は、適正な地価の形成及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。

第十七条  国及び地方公共団体は、土地に関する施策の総合的かつ効率的な実施を図るため、土地の所有及び利用の状況、地価の動向等に関し、調査を実施し、資料を収集する等必要な措置を講ずるものとする。
 国及び地方公共団体は、土地に関する施策の円滑な実施に資するため、個人の権利利益の保護に配慮しつつ、国民に対し、土地の所有及び利用の状況、地価の動向等の土地に関する情報を提供するように努めるものとする。

第十八条  国及び地方公共団体は、土地に関する施策を講ずるにつき、相協力し、その整合性を確保するように努めるものとする。
 国及び地方公共団体は、土地に関する施策を講ずるにつき、総合的見地に立った行政組織の整備及び行政運営の改善に努めるものとする。

   第三章 国土審議会の調査審議等

第十九条  国土審議会は、国土交通大臣の諮問に応じ、土地に関する総合的かつ基本的な施策に関する事項及び国土の利用に関する基本的な事項を調査審議する。
 国土審議会は、前項に規定する事項に関し、国土交通大臣に対し、及び国土交通大臣を通じて関係行政機関の長に対し、意見を申し出ることができる。
 関係行政機関の長は、土地に関する総合的かつ基本的な施策に関する事項でその所掌に係るもの及び国土の利用に関する基本的な事項でその所掌に係るものについて国土審議会の意見を聴くことができる。

   附 則 抄

(施行期日)
 この法律は、公布の日から施行する。

   附 則 (平成一一年七月一六日法律第一〇二号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 附則第十条第一項及び第五項、第十四条第三項、第二十三条、第二十八条並びに第三十条の規定 公布の日

(職員の身分引継ぎ)
第三条  この法律の施行の際現に従前の総理府、法務省、外務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省又は自治省(以下この条において「従前の府省」という。)の職員(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条の審議会等の会長又は委員長及び委員、中央防災会議の委員、日本工業標準調査会の会長及び委員並びに これらに類する者として政令で定めるものを除く。)である者は、別に辞令を発せられない限り、同一の勤務条件をもって、この法律の施行後の内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省若しくは環境省(以下この条において「新府省」という。)又はこれに置かれる部局若しくは機関のうち、この法律の施行の際現に当該職員が属する従前の府省又はこれに置かれる部局若しくは機関の相当の新府省又はこれに置かれる部局若しくは機関として政令で定めるものの相当の職員となるものとする。

(別に定める経過措置)
第三十条  第二条から前条までに規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要となる経過措置は、別に法律で定める。

   附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。