住生活基本法¶
住生活基本法(平成十八年六月八日法律第六十一号)
最終改正:平成二三年八月三〇日法律第一〇五号
第一章 総則(第一条―第十条)
第二章 基本的施策(第十一条―第十四条)
第三章 住生活基本計画(第十五条―第二十条)
第四章 雑則(第二十一条・第二十二条)
附則
第一条
この法律は、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策について、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体並びに住宅関連事業者の責務を明らかにするとともに、基本理念の実現を図るための基本的施策、住生活基本計画その他の基本となる事項を定めることにより、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上と社会福祉の増進を図るとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
2
この法律において「公営住宅等」とは、次に掲げる住宅をいう。
三
独立行政法人住宅金融支援機構が貸し付ける資金によって建設、購入又は改良が行われる住宅
四
独立行政法人都市再生機構がその業務として賃貸又は譲渡を行う住宅
五
前各号に掲げるもののほか、国、政府関係機関若しくは地方公共団体が建設を行う住宅又は国若しくは地方公共団体が補助、貸付けその他の助成を行うことによりその建設の推進を図る住宅
第三条
住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進は、我が国における近年の急速な少子高齢化の進展、生活様式の多様化その他の社会経済情勢の変化に的確に対応しつつ、住宅の需要及び供給に関する長期見通しに即し、かつ、居住者の負担能力を考慮して、現在及び将来における国民の住生活の基盤となる良質な住宅の供給、建設、改良又は管理(以下「供給等」という。)が図られることを旨として、行われなければならない。
第四条
住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進は、地域の自然、歴史、文化その他の特性に応じて、環境との調和に配慮しつつ、住民が誇りと愛着をもつことのできる良好な居住環境の形成が図られることを旨として、行われなければならない。
第五条
住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進は、民間事業者の能力の活用及び既存の住宅の有効利用を図りつつ、居住のために住宅を購入する者及び住宅の供給等に係るサービスの提供を受ける者の利益の擁護及び増進が図られることを旨として、行われなければならない。
第六条
住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることにかんがみ、低額所得者、被災者、高齢者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、行われなければならない。
2
国は、基本理念にのっとり、住宅の品質又は性能の維持及び向上に資する技術に関する研究開発を促進するとともに、住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術の継承及び向上を図るため、これらの技術に関する情報の収集及び提供その他必要な措置を講ずるものとする。
3
国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動その他の活動を通じて、住生活の安定の確保及び向上の促進に関し、国民の理解を深め、かつ、その協力を得るよう努めなければならない。
第八条
住宅の供給等を業として行う者(以下「住宅関連事業者」という。)は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たって、自らが住宅の安全性その他の品質又は性能の確保について最も重要な責任を有していることを自覚し、住宅の設計、建設、販売及び管理の各段階において住宅の安全性その他の品質又は性能を確保するために必要な措置を適切に講ずる責務を有する。
2
前項に定めるもののほか、住宅関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る住宅に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
第九条
国、地方公共団体、公営住宅等の供給等を行う者、住宅関連事業者、居住者、地域において保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者その他の関係者は、基本理念にのっとり、現在及び将来の国民の住生活の安定の確保及び向上の促進のため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。
第十一条
国及び地方公共団体は、国民の住生活を取り巻く環境の変化に対応した良質な住宅の供給等が図られるよう、住宅の地震に対する安全性の向上を目的とした改築の促進、住宅に係るエネルギーの使用の合理化の促進、住宅の管理に関する知識の普及及び情報の提供その他住宅の安全性、耐久性、快適性、エネルギーの使用の効率性その他の品質又は性能の維持及び向上並びに住宅の管理の合理化又は適正化のために必要な施策を講ずるものとする。
第十二条
国及び地方公共団体は、良好な居住環境の形成が図られるよう、住民の共同の福祉又は利便のために必要な施設の整備、住宅市街地における良好な景観の形成の促進その他地域における居住環境の維持及び向上のために必要な施策を講ずるものとする。
第十三条
国及び地方公共団体は、居住のために住宅を購入する者及び住宅の供給等に係るサービスの提供を受ける者の利益の擁護及び増進が図られるよう、住宅関連事業者による住宅に関する正確かつ適切な情報の提供の促進、住宅の性能の表示に関する制度の普及その他住宅の供給等に係る適正な取引の確保及び住宅の流通の円滑化のための環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。
第十四条
国及び地方公共団体は、国民の居住の安定の確保が図られるよう、公営住宅及び災害を受けた地域の復興のために必要な住宅の供給等、高齢者向けの賃貸住宅及び子どもを育成する家庭向けの賃貸住宅の供給の促進その他必要な施策を講ずるものとする。
第十五条
政府は、基本理念にのっとり、前章に定める基本的施策その他の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画(以下「全国計画」という。)を定めなければならない。
2
全国計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一
計画期間
二
住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策についての基本的な方針
三
国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する目標
四
前号の目標を達成するために必要と認められる住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策であって基本的なものに関する事項
五
東京都、大阪府その他の住宅に対する需要が著しく多い都道府県として政令で定める都道府県における住宅の供給等及び住宅地の供給の促進に関する事項
六
前各号に掲げるもののほか、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3
国土交通大臣は、全国計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4
国土交通大臣は、前項の規定により全国計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、インターネットの利用その他の国土交通省令で定める方法により、国民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、関係行政機関の長に協議し、社会資本整備審議会及び都道府県の意見を聴かなければならない。
5
国土交通大臣は、全国計画について第三項の閣議の決定があったときは、遅滞なく、これを公表するとともに、都道府県に通知しなければならない。
6
前三項の規定は、全国計画の変更について準用する。
2
国土交通大臣は、前条第五項(同条第六項において準用する場合を含む。)の規定による公表の日から二年を経過した日以後、行政機関が行う政策の評価に関する法律第七条第一項
の実施計画を初めて定めるときは、同条第二項第一号
の政策として、全国計画を定めなければならない。
2
都道府県計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一
計画期間
二
当該都道府県の区域内における住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策についての基本的な方針
三
当該都道府県の区域内における住民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する目標
四
前号の目標を達成するために必要と認められる当該都道府県の区域内における住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策に関する事項
五
計画期間における当該都道府県の区域内の公営住宅の供給の目標量
六
第十五条第二項第五号の政令で定める都道府県にあっては、計画期間内において住宅の供給等及び住宅地の供給を重点的に図るべき地域に関する事項
七
前各号に掲げるもののほか、当該都道府県の区域内における住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3
都道府県は、都道府県計画を定めようとするときは、あらかじめ、インターネットの利用その他の国土交通省令で定める方法により、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、当該都道府県の区域内の市町村に協議しなければならない。この場合において、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法
(平成十七年法律第七十九号)第五条第一項
の規定により地域住宅協議会を組織している都道府県にあっては、当該地域住宅協議会の意見を聴かなければならない。
4
都道府県は、都道府県計画を定めようとするときは、あらかじめ、第二項第五号に係る部分について、国土交通大臣に協議し、その同意を得なければならない。
5
国土交通大臣は、前項の同意をしようとするときは、厚生労働大臣に協議しなければならない。
6
都道府県計画は、国土形成計画法
(昭和二十五年法律第二百五号)第二条第一項
に規定する国土形成計画及び社会資本整備重点計画法
(平成十五年法律第二十号)第二条第一項
に規定する社会資本整備重点計画との調和が保たれたものでなければならない。
7
都道府県は、都道府県計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、国土交通大臣に報告しなければならない。
8
第三項から前項までの規定は、都道府県計画の変更について準用する。
第十八条
国及び地方公共団体は、住生活基本計画に即した公営住宅等の供給等に関する事業の実施のために必要な措置を講ずるとともに、住生活基本計画に定められた目標を達成するために必要なその他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2
国は、都道府県計画の実施並びに住宅関連事業者、まちづくりの推進を図る活動を行うことを目的として設立された特定非営利活動促進法
(平成十年法律第七号)第二条第二項
に規定する特定非営利活動法人、地方自治法
(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十条の二第一項
に規定する地縁による団体その他の者(以下この項において「住宅関連事業者等」という。)が住生活基本計画に即して行う住生活の安定の確保及び向上の促進に関する活動を支援するため、情報の提供、住宅関連事業者等が住宅の供給等について講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針の策定その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3
独立行政法人住宅金融支援機構、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社及び土地開発公社は、住宅の供給等又は住宅地の供給に関する事業を実施するに当たっては、住生活基本計画に定められた目標の達成に資するよう努めなければならない。
第二十条
国土交通大臣は、全国計画の策定又は実施のために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、必要な資料の提出を求め、又は当該行政機関の所管に係る公営住宅等の供給等に関し意見を述べることができる。
2
国土交通大臣は、毎年度、前項の報告を取りまとめ、その概要を公表するものとする。
第二十二条
この法律に規定する国土交通大臣及び厚生労働大臣の権限は、国土交通大臣の権限にあっては国土交通省令で定めるところにより地方整備局長又は北海道開発局長にその一部を、厚生労働大臣の権限にあっては厚生労働省令で定めるところにより地方厚生局長にその全部又は一部を、それぞれ委任することができる。
附 則 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から施行する。
第五条
第十七条第一項の規定により都道府県計画が定められるまでの間に、平成十八年度の予算に係る公営住宅の整備等で緊急に実施する必要があるものとして、都道府県が関係市町村に協議するとともに、国土交通大臣に協議し、その同意を得て決定したものについては、同項の規定により定められた都道府県計画に基づく公営住宅の整備等とみなして、附則第三条の規定による改正後の公営住宅法の規定を適用する。この場合において、国土交通大臣は、同意をしようとするときは、厚生労働大臣に協議しなければならない。
(政令への委任)
第十七条
この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
附 則 (平成二三年八月三〇日法律第一〇五号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
第八十一条
この法律(附則第一条各号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条において同じ。)の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(政令への委任)
第八十二条
この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。