ドミニカ移住者に対する特別一時金の支給等に関する法律

ドミニカ移住者に対する特別一時金の支給等に関する法律
(平成十八年十一月二十二日法律第百三号)



 昭和三十一年から昭和三十四年までの間に実施されたドミニカ共和国への移住においては、国が企画及び立案を行い、財団法人日本海外協会連合会が移住者の募集等の実施事務を行うことによりその事業が進められたところ、その全期間を通じて、入植予定地の事前調査や移住条件についての情報提供が適切に行われなかったこと等により、移住者の生活基盤の構築に多大な困難を生じさせ、その後の同国の社会経済情勢の著しい変動や全土にわたる自然災害の頻発等とあいまって、移住者は、長年にわたる労苦を余儀なくされた。このように、同国への移住については、他の移住先には見られない特有かつ特別の事情があったと認められる。ここに、移住者に多大な労苦をかけたことについて、国として率直に反省し、特別一時金を支給すること等により、移住者の努力に報い、かつ、移住者が幾多の苦境を乗り越えて我が国とドミニカ共和国との友好関係の発展に寄与してきたことに深い敬意を表するとともに、かつての同国への移住に関する経緯を超え、引き続き、両国の良好な関係の発展に資するよう、この法律を制定する。

第一条  この法律は、ドミニカ移住者に対する特別一時金の支給等に関し必要な事項を定めるものとする。

第二条  この法律において「ドミニカ移住者」とは、昭和三十一年から昭和三十四年までの間に、財団法人日本海外協会連合会が行った募集に応じ、選定されて、ドミニカ共和国に移住した者をいう。

第三条  ドミニカ移住者(ドミニカ移住者がこの法律の施行前に死亡している場合にあっては、その遺族)には、特別一時金を支給する。
 特別一時金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、外務大臣が行う。
 国内に居住地を有しない者が行う前項の請求は、当該請求を行う者の居住地を管轄する領事官(領事官の職務を行う大使館若しくは公使館の長又はその事務を代理する者を含む。以下この項において同じ。)その他最寄りの領事官(領事官を経由した請求を行うことが著しく困難である地域として外務省令で定める地域にあっては、外務省令で定める者とする。)を経由して行うことができる。

第四条  特別一時金の支給を受けるべき遺族の範囲は、この法律の施行前に死亡したドミニカ移住者(次条第一項第一号において「施行前死亡移住者」という。)のこの法律の施行の時における配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とする。

第五条  特別一時金の支給を受けるべき遺族の順位は、次に掲げる順序による。ただし、同順位の父母については、養父母を先にし実父母を後にし、同順位の祖父母については、養父母の父母を先にし実父母の父母を後にし、父母の養父母を先にし実父母を後にする。
 配偶者(施行前死亡移住者の死亡の日以後この法律の施行の日(以下「施行日」という。)の前日以前に、前条に規定する遺族(以下この項において「遺族」という。)以外の者の養子となり、又は遺族以外の者と婚姻した者を除く。)
 子(施行日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)
 父母
 孫(施行日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)
 祖父母
 兄弟姉妹(施行日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)
 第二号において同号の順位から除かれている子
 第四号において同号の順位から除かれている孫
 第六号において同号の順位から除かれている兄弟姉妹
 第一号において同号の順位から除かれている配偶者
 前項の規定により特別一時金の支給を受けるべき順位にある遺族が、施行日以後引き続き六月以上生死不明の場合において、同順位者がないときは、次順位者の請求により、当該次順位者(当該次順位者と同順位の他の遺族があるときは、そのすべての同順位者)を特別一時金の支給を受けるべき順位の遺族とみなすことができる。
 特別一時金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上あるときは、その一人のした特別一時金の支給の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした特別一時金の支給を受ける権利の認定は、全員に対してしたものとみなす。

第六条  特別一時金の支給の請求は、平成二十年一月三十一日までに行わなければならない。
 前項の期間内に特別一時金の支給の請求をしなかった者には、特別一時金を支給しない。

第七条  特別一時金の額は、次の各号に掲げるドミニカ移住者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
 次に掲げる者 五十万円
イ 本邦に永住する目的又は本邦に帰国してドミニカ共和国以外の国若しくは地域へ移住する目的で、昭和三十七年三月十九日までにドミニカ共和国から出国した者
ロ 本邦に帰国することなくドミニカ共和国以外の国又は地域へ移住する目的で、昭和三十八年三月八日までにドミニカ共和国から出国した者
 前号に掲げる者以外の者 百二十万円
 ドミニカ共和国への移住に伴う特有かつ特別の事情に起因して、その移住事業の経緯及び実態並びにドミニカ移住者の実情を明らかにするための諸活動について負担をする等特別の労苦があった者として外務大臣が認めるドミニカ移住者に係る特別一時金の額は、当該ドミニカ移住者一人につき前項各号に定める金額に八十万円を加算した額とする。

第八条  特別一時金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に特別一時金の支給の請求をしていなかったときは、その者の相続人は、自己の名で、当該特別一時金の支給を請求することができる。
 第五条第三項の規定は、前項の規定により特別一時金の支給を受けることができる同順位の相続人が二人以上ある場合について準用する。

第九条  特別一時金の支給を受ける権利は、譲渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

第十条  租税その他の公課は、特別一時金を標準として、課することができない。

第十一条  国は、ドミニカ移住者及びその家族の生活の安定及び福祉の向上に資するため、ドミニカ共和国においてこれらの者の生活の支援等の活動を行う民間の団体の当該活動に対する援助(第七条第二項に規定する諸活動について特別の負担をした者に対しその費用の一部を補てんする措置に対する援助として、資金を供与することを含むものとし、国の供与する当該資金の総額は、邦貨二千万円に相当する額とする。)その他必要な施策を講ずるものとする。

第十二条  この法律に定めるもののほか、特別一時金の支給の請求の手続その他この法律を実施するため必要な事項は、外務省令で定める。

   附 則

 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第十一条の規定は、公布の日から起算して四月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 前項の規定にかかわらず、特別一時金の支給を受ける権利の認定は、同項ただし書に規定する政令で定める日の前日までの間は、行わないものとする。