少年鑑別所法

少年鑑別所法
(平成二十六年六月十一日法律第五十九号)



 第一章 総則
  第一節 目的等(第一条・第二条)
  第二節 少年鑑別所の運営(第三条―第十三条)
  第三節 関係機関等との連携(第十四条・第十五条)
 第二章 鑑別対象者の鑑別(第十六条―第十八条)
 第三章 在所者の観護処遇
  第一節 通則(第十九条―第二十二条)
  第二節 入所(第二十三条―第二十五条)
  第三節 観護処遇の態様等(第二十六条・第二十七条)
  第四節 健全な育成のための支援(第二十八条・第二十九条)
  第五節 保健衛生及び医療(第三十条―第四十条)
  第六節 物品の貸与等及び自弁(第四十一条―第四十四条)
  第七節 金品の取扱い(第四十五条―第六十四条)
  第八節 書籍等の閲覧等(第六十五条―第六十九条)
  第九節 宗教上の行為等(第七十条・第七十一条)
  第十節 規律及び秩序の維持(第七十二条―第七十九条)
  第十一節 外部交通
   第一款 面会
    第一目 被観護在所者(第八十条―第八十四条)
    第二目 未決在所者(第八十五条―第八十七条)
    第三目 在院中在所者(第八十八条―第九十条)
    第四目 各種在所者(第九十一条)
   第二款 信書の発受
    第一目 被観護在所者(第九十二条―第九十八条)
    第二目 未決在所者(第九十九条)
    第三目 在院中在所者(第百条―第百三条)
    第四目 各種在所者(第百四条)
   第三款 電話等による通信(第百五条・第百六条)
   第四款 雑則(第百七条・第百八条)
  第十二節 救済の申出等
   第一款 救済の申出(第百九条―第百十七条)
   第二款 苦情の申出(第百十八条・第百十九条)
   第三款 雑則(第百二十条―第百二十二条)
  第十三節 仮収容(第百二十三条)
  第十四節 退所(第百二十四条―第百二十八条)
  第十五節 死亡(第百二十九条・第百三十条)
 第四章 非行及び犯罪の防止に関する援助(第百三十一条)
 第五章 罰則(第百三十二条)
 附則

   第一章 総則

    第一節 目的等

第一条  この法律は、少年鑑別所の適正な管理運営を図るとともに、鑑別対象者の鑑別を適切に行うほか、在所者の人権を尊重しつつ、その者の状況に応じた適切な観護処遇を行い、並びに非行及び犯罪の防止に関する援助を適切に行うことを目的とする。

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 鑑別対象者 第十七条第一項又は第十八条第一項の規定による鑑別の対象となる者をいう。
 在所者 少年鑑別所に収容されている者をいう。
 被観護在所者 少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)第十七条第一項第二号 の観護の措置(同条第七項 の規定により同号 の観護の措置とみなされる場合を含む。以下単に「観護の措置」という。)が執られて少年鑑別所に収容されている者又は同法第十四条第二項 において準用する刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)第百六十七条第一項 の規定により少年鑑別所に留置されている者をいう。
 未決在所者 刑事訴訟法 の規定により少年鑑別所に勾留(少年法第四十五条第四号 の規定により勾留とみなされる場合を含む。第百二十五条第一号及び第三号において同じ。)されている者又は刑事訴訟法第百六十七条第一項同法第二百二十四条第二項 において準ずる場合を含む。)の規定により少年鑑別所に留置されている者をいう。
 在院中在所者 少年院法 (平成二十六年法律第五十八号)第三十六条第二項 又は第百三十三条第一項 若しくは第二項 の規定により少年鑑別所に収容されている者をいう。
 各種在所者 在所者であって、被観護在所者、未決在所者及び在院中在所者以外のものをいう。
 保護者 少年法第二条第二項 に規定する保護者をいう。
 保護者等 次のイ又はロのいずれかに該当する者(在所者に対し虐待、悪意の遺棄その他これらに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をした者であって、その在所者の健全な育成を著しく妨げると認められるものを除く。)をいう。
 在所者の保護者
 在所者の親族(イに掲げる者を除き、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)

    第二節 少年鑑別所の運営

第三条  少年鑑別所は、次に掲げる事務を行う施設とする。
 鑑別対象者の鑑別を行うこと。
 観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される者その他法令の規定により少年鑑別所に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者を収容し、これらの者に対し必要な観護処遇を行うこと。
 この法律の定めるところにより、非行及び犯罪の防止に関する援助を行うこと。

第四条  在所者は、次に掲げる別に従い、それぞれ互いに分離するものとする。
 性別
 被観護在所者(未決在所者としての地位を有するものを除く。)、未決在所者(被観護在所者としての地位を有するものを除く。)、未決在所者としての地位を有する被観護在所者、在院中在所者及び各種在所者の別
 前項の規定にかかわらず、適当と認めるときは、居室(在所者が主として休息及び就寝のために使用する場所として少年鑑別所の長が指定する室をいう。以下同じ。)外に限り、同項第二号に掲げる別による分離をしないことができる。

第五条  法務大臣は、この法律の適正な施行を期するため、その職員のうちから監査官を指名し、各少年鑑別所について、毎年一回以上、これに実地監査を行わせなければならない。

第六条  少年鑑別所の長は、その少年鑑別所の適正な運営に資するため必要な意見を関係する公務所及び公私の団体の職員並びに学識経験のある者から聴くことに努めなければならない。

第七条  少年鑑別所に、少年鑑別所視察委員会(以下「委員会」という。)を置く。
 委員会は、その置かれた少年鑑別所を視察し、その運営に関し、少年鑑別所の長に対して意見を述べるものとする。

第八条  委員会は、委員七人以内で組織する。
 委員は、人格が高潔であって、少年の健全な育成に関する識見を有し、かつ、少年鑑別所の運営の改善向上に熱意を有する者のうちから、法務大臣が任命する。
 委員の任期は、一年とする。ただし、再任を妨げない。
 委員は、非常勤とする。
 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、法務省令で定める。

第九条  少年鑑別所の長は、少年鑑別所の運営の状況について、法務省令で定めるところにより、定期的に、又は必要に応じて、委員会に対し、情報を提供するものとする。
 委員会は、少年鑑別所の運営の状況を把握するため、委員による少年鑑別所の視察をすることができる。この場合において、委員会は、必要があると認めるときは、少年鑑別所の長に対し、委員による在所者との面接の実施について協力を求めることができる。
 少年鑑別所の長は、前項の視察及び在所者との面接について、必要な協力をしなければならない。
 第九十三条(第九十九条において準用する場合を含む。)及び第百一条(第百四条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、在所者が委員会に対して提出する書面は、検査をしてはならない。

第十条  法務大臣は、毎年、委員会が少年鑑別所の長に対して述べた意見及びこれを受けて少年鑑別所の長が講じた措置の内容を取りまとめ、その概要を公表するものとする。

第十一条  裁判官及び検察官は、少年鑑別所を巡視することができる。

第十二条  少年鑑別所の長は、その少年鑑別所の参観を申し出る者がある場合において相当と認めるときは、これを許すことができる。

第十三条  少年鑑別所の職員には、在所者の人権に関する理解を深めさせ、並びに鑑別対象者の鑑別、在所者の観護処遇その他の少年鑑別所の業務を適正かつ効果的に行うために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修及び訓練を行うものとする。

    第三節 関係機関等との連携

第十四条  少年鑑別所の長は、第三条各号に掲げる事務を適切に実施するため必要があると認めるときは、家庭裁判所、少年院、地方更生保護委員会又は保護観察所その他の関係行政機関、学校、病院、児童の福祉に関する機関、民間の篤志家その他の者に対し、協力を求めるものとする。
 前項の協力をした者は、その協力を行うに当たって知り得た鑑別対象者又は在所者に関する秘密を漏らしてはならない。

第十五条  少年鑑別所の長は、鑑別対象者の鑑別及び在所者の観護処遇の適切な実施のため必要があるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

   第二章 鑑別対象者の鑑別

第十六条  鑑別対象者の鑑別においては、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術に基づき、鑑別対象者について、その非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、その事情の改善に寄与するため、その者の処遇に資する適切な指針を示すものとする。
 鑑別対象者の鑑別を行うに当たっては、その者の性格、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況、家庭環境並びに交友関係、在所中の生活及び行動の状況(鑑別対象者が在所者である場合に限る。)その他の鑑別を行うために必要な事項に関する調査を行うものとする。
 前項の調査は、鑑別を求めた者に対して資料の提出、説明その他の必要な協力を求める方法によるほか、必要と認めるときは、鑑別対象者又はその保護者その他参考人との面接、心理検査その他の検査、前条の規定による照会その他相当と認める方法により行うものとする。

第十七条  少年鑑別所の長は、家庭裁判所、地方更生保護委員会、保護観察所の長、児童自立支援施設の長、児童養護施設の長、少年院の長又は刑事施設の長から、次に掲げる者について鑑別を求められたときは、これを行うものとする。
 保護処分(更生保護法 (平成十九年法律第八十八号)第七十二条第一項 並びに少年院法第百三十八条第二項 及び第百三十九条第二項 の規定による措置を含む。次号において同じ。)又は少年法第十八条第二項 の規定による措置に係る事件の調査又は審判を受ける者
 保護処分の執行を受ける者
 懲役又は禁錮の刑の執行を受ける者であって、二十歳未満のもの
 少年鑑別所の長は、前項の規定による鑑別を終えたときは、速やかに、書面で、鑑別を求めた者に対し、鑑別の結果を通知するものとする。
 前項の通知を受けた者は、鑑別により知り得た秘密を漏らしてはならない。

第十八条  少年鑑別所の長は、その職員が家庭裁判所から少年法第二十四条第一項第三号 の保護処分に係る同項 の決定又は更生保護法第七十二条第一項 の決定の執行の指揮を受けたときは、その決定を受けた者について鑑別を行い、少年院法第三十一条 の規定により各少年院について指定された矯正教育課程(同法第三十条 に規定する矯正教育課程をいう。)その他の事情を考慮して、その者を収容すべき少年院を指定するものとする。
 少年鑑別所の長は、前項の指定をしたときは、その旨を同項の決定を受けた者に告知し、及び同項の指定に係る少年院の長に通知するものとする。
 前項の規定による少年院の長に対する通知には、第一項の規定による鑑別の結果を付するものとする。

   第三章 在所者の観護処遇

    第一節 通則

第十九条  在所者の観護処遇は、この章の定めるところにより行うものとする。

第二十条  在所者の観護処遇に当たっては、懇切にして誠意のある態度をもって接することにより在所者の情操の保護に配慮するとともに、その者の特性に応じた適切な働き掛けを行うことによりその健全な育成に努めるものとする。
 在所者の観護処遇は、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術を活用して行うものとする。

第二十一条  未決在所者の観護処遇に当たっては、未決の者としての地位を考慮し、その逃走及び刑事事件に関する証拠の隠滅の防止並びにその防御権の尊重に特に留意しなければならない。

第二十二条  在院中在所者の観護処遇に当たっては、矯正教育を受ける者としての地位を考慮し、その改善更生及び円滑な社会復帰に資するよう留意しなければならない。

    第二節 入所

第二十三条  少年鑑別所の長は、在所者に対し、その少年鑑別所への入所に際し、在所者としての地位に応じ、次に掲げる事項を告知しなければならない。その少年鑑別所に収容されている在所者がその地位を異にするに至ったときも、同様とする。
 保健衛生及び医療に関する事項
 物品の貸与及び支給並びに自弁に関する事項
 金品の取扱いに関する事項
 書籍等(書籍、雑誌その他の文書図画(信書及び新聞紙を除く。)をいう。以下同じ。)及び新聞紙の閲覧に関する事項
 宗教上の行為、儀式行事及び教誨に関する事項
 第七十三条第一項に規定する遵守事項
 面会及び信書の発受に関する事項
 第百九条又は第百十条第一項の規定による申出に関する事項
 苦情の申出に関する事項
 前項の規定による告知は、法務省令で定めるところにより、平易な表現を用いて、書面で行う。

第二十四条  法務省令で定める少年鑑別所の職員(以下「指定職員」という。)は、在所者について、その少年鑑別所への入所に際し、その者の識別のため必要な限度で、その身体を検査することができる。その後必要が生じたときも、同様とする。
 女子の在所者について前項の規定により検査を行う場合には、女子の指定職員がこれを行わなければならない。ただし、女子の指定職員がその検査を行うことができない場合には、男子の指定職員が少年鑑別所の長の指名する女子の職員を指揮して、これを行うことができる。

第二十五条  少年鑑別所の長は、被観護在所者、未決在所者その他法務省令で定める在所者がその少年鑑別所に入所したときは、速やかに、その旨をその保護者その他相当と認める者に通知するものとする。

    第三節 観護処遇の態様等

第二十六条  在所者の観護処遇(運動、入浴又は面会の場合その他の法務省令で定める場合における観護処遇を除く。)は、居室外において行うことが適当と認める場合を除き、昼夜、居室において行う。
 在所者の居室は、その観護処遇上又は鑑別上共同室に収容することが適当と認める場合を除き、できる限り、単独室とする。
 前項の規定にかかわらず、被観護在所者及び未決在所者について、その保護事件又は刑事事件に関する証拠の隠滅の防止上支障を生ずるおそれがある場合には、その居室は単独室としなければならない。
 被観護在所者及び未決在所者は、その保護事件又は刑事事件に関する証拠の隠滅の防止上支障を生ずるおそれがある場合には、居室外においても他の在所者と接触をさせてはならない。

第二十七条  少年鑑別所の長は、法務省令で定めるところにより、食事、就寝その他の起居動作をすべき時間帯を定め、これを在所者に告知するものとする。

    第四節 健全な育成のための支援

第二十八条  少年鑑別所の長は、在所者が健全な社会生活を営むことができるよう、在所者に対し、その自主性を尊重しつつ、その生活態度に関し必要な助言及び指導を行うものとする。

第二十九条  少年鑑別所の長は、在所者の情操を豊かにし、その者が健全な社会生活を営むために必要な知識及び能力を向上させることができるよう、在所者に対し、その自主性を尊重しつつ、学習、文化活動その他の活動の機会を与えるとともに、その活動の実施に関し必要な助言及び援助を行うものとする。
 前項の場合において、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)に定める義務教育を終了しない在所者に対しては、学習の機会が与えられるよう特に配慮しなければならない。

    第五節 保健衛生及び医療

第三十条  少年鑑別所においては、在所者の心身の状況を把握することに努めるとともに、在所者の健全な心身の成長を図り、及び少年鑑別所内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。

第三十一条  在所者には、日曜日その他法務省令で定める日を除き、できる限り戸外で、その健全な心身の成長を図るため適切な運動を行う機会を与えなければならない。ただし、審判期日又は公判期日への出頭その他の事情により少年鑑別所の執務時間内にその機会を与えることができないときは、この限りでない。

第三十二条  在所者は、身体、着衣及び所持品並びに居室その他日常使用する場所を清潔にしなければならない。

第三十三条  在所者には、法務省令で定めるところにより、少年鑑別所における保健衛生上適切な入浴を行わせる。

第三十四条  少年鑑別所の長は、在所者が調髪又はひげそりを行いたい旨の申出をした場合には、法務省令で定めるところにより、これを許すものとする。

第三十五条  少年鑑別所の長は、在所者に対し、その少年鑑別所への入所後速やかに、法務省令で定めるところにより、健康診断を行わなければならない。少年鑑別所における保健衛生上必要があるときも、同様とする。
 在所者は、前項の規定による健康診断を受けなければならない。この場合においては、その健康診断の実施のため必要な限度内における採血、エックス線撮影その他の医学的処置を拒むことはできない。

第三十六条  少年鑑別所の長は、在所者が次の各号のいずれかに該当する場合には、速やかに、少年鑑別所の職員である医師等(医師又は歯科医師をいう。以下この項及び次条において同じ。)又は少年鑑別所の長が委嘱する医師等による診療(栄養補給の処置を含む。以下同じ。)を行い、その他必要な医療上の措置を執るものとする。ただし、第一号に該当する場合において、その者の心身に著しい障害が生じ、又は他人にその疾病を感染させるおそれがないときは、その者の意思に反しない場合に限る。
 負傷し、若しくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるとき。
 飲食物を摂取しない場合において、その心身に著しい障害が生ずるおそれがあるとき。
 少年鑑別所の長は、前項の規定により診療を行う場合において、必要に応じ在所者を少年鑑別所の外の病院又は診療所に通院させ、やむを得ないときは在所者を少年鑑別所の外の病院又は診療所に入院させることができる。

第三十七条  少年鑑別所の長は、負傷し、又は疾病にかかっている在所者について、その者又はその親権を行う者若しくは未成年後見人(以下「親権を行う者等」という。)が、医師等(少年鑑別所の職員である医師等及び少年鑑別所の長が委嘱する医師等を除く。)を指名して、その在所者がその診療を受けることを申請した場合において、傷病の種類及び程度、入所前にその医師等による診療を受けていたことその他の事情に照らして、その在所者の医療上適当であると認めるときは、少年鑑別所内において、その在所者が自弁によりその診療を受けることを許すことができる。
 少年鑑別所の長は、前項の規定による診療を受けることを許す場合において、同項の診療を行う医師等(以下この条において「指名医」という。)の診療方法を確認するため、又はその後にその在所者に対して少年鑑別所において診療を行うため必要があるときは、少年鑑別所の職員をしてその診療に立ち会わせ、若しくはその診療に関して指名医に質問させ、又は診療録の写しその他のその診療に関する資料の提出を求めることができる。
 指名医は、その診療に際し、少年鑑別所の長が法務省令で定めるところにより指示する事項を遵守しなければならない。
 少年鑑別所の長は、第一項の規定による診療を受けることを許した場合において、その指名医が、第二項の規定により少年鑑別所の長が行う措置に従わないとき、前項の規定により少年鑑別所の長が指示する事項を遵守しないとき、その他その診療を継続することが不適当であるときは、これを中止し、以後、その指名医の診療を受けることを許さないことができる。

第三十八条  少年鑑別所の長は、負傷し、又は疾病にかかっている在所者が重態となり、又はそのおそれがあると認めるときは、直ちに、その旨をその保護者その他相当と認める者に通知しなければならない。
 少年鑑別所の長は、前項の規定により通知を受けた者から同項の在所者を看護したい旨の申出があった場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、その在所者に対し、その看護を受けることを許すことができる。

第三十九条  少年鑑別所の長は、少年鑑別所内における感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要がある場合には、在所者に対し、第三十五条の規定による健康診断又は第三十六条の規定による診療その他必要な医療上の措置を執るほか、予防接種、当該疾病を感染させるおそれがなくなるまでの間の隔離その他法務省令で定める措置を執るものとする。

第四十条  少年鑑別所の長は、妊産婦、身体虚弱者その他の養護を必要とする在所者について、その養護を必要とする事情に応じ、傷病者のための措置に準じた措置を執るものとする。
 少年鑑別所の長は、在所者が出産するときは、やむを得ない場合を除き、少年鑑別所の外の病院、診療所又は助産所に入院させるものとする。

    第六節 物品の貸与等及び自弁

第四十一条  在所者には、次に掲げる物品(書籍等及び新聞紙を除く。以下この節において同じ。)であって、少年鑑別所における日常生活に必要なもの(第四十三条第一項各号に掲げる物品を除く。)を貸与し、又は支給する。
 衣類及び寝具
 食事及び湯茶
 日用品、学用品その他の物品
 在所者には、前項に定めるもののほか、法務省令で定めるところにより、必要に応じ、室内装飾品その他の少年鑑別所における日常生活に用いる物品(第四十三条第一項各号に掲げる物品を除く。)を貸与し、又は嗜好品(酒類及びたばこを除く。次条第一項第四号において同じ。)を支給することができる。

第四十二条  少年鑑別所の長は、在院中在所者以外の在所者が、次に掲げる物品(次条第一項各号に掲げる物品を除く。次項において同じ。)について、自弁のものを使用し、又は摂取したい旨の申出をした場合には、少年鑑別所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合並びにその健全な育成を著しく妨げるおそれがある場合を除き、法務省令で定めるところにより、これを許すものとする。
 衣類
 食料品及び飲料
 室内装飾品
 嗜好品
 日用品、学用品その他の少年鑑別所における日常生活に用いる物品
 少年鑑別所の長は、在院中在所者が、前項各号に掲げる物品について、自弁のものを使用し、又は摂取したい旨の申出をした場合において、その者の観護処遇上適当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、これを許すことができる。

第四十三条  在所者には、次に掲げる物品については、少年鑑別所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合を除き、自弁のものを使用させるものとする。
 眼鏡その他の補正器具
 信書を発するのに必要な封筒その他の物品
 その他法務省令で定める物品
 前項各号に掲げる物品について、在所者が自弁のものを使用することができない場合であって、必要と認めるときは、その者にこれを貸与し、又は支給するものとする。

第四十四条  第四十一条又は前条第二項の規定により貸与し、又は支給する物品は、在所者の健全な育成を図るのにふさわしく、かつ、国民生活の実情等を勘案し、在所者としての地位に照らして、適正と認められるものでなければならない。

    第七節 金品の取扱い

第四十五条  少年鑑別所の職員は、次に掲げる金品について、検査を行うことができる。
 在所者が入所の際に所持する現金及び物品
 在所者が在所中に取得した現金及び物品(信書を除く。次号において同じ。)であって、同号に掲げる現金及び物品以外のもの(少年鑑別所の長から支給された物品を除く。)
 在所者に交付するため当該在所者以外の者が少年鑑別所に持参し、又は送付した現金及び物品

第四十六条  少年鑑別所の長は、前条第一号又は第二号に掲げる物品が次の各号のいずれかに該当するときは、在所者に対し、その物品について、その保護者等その他相当と認める者への交付その他相当の処分を求めるものとする。
 保管に不便なものであるとき。
 腐敗し、又は滅失するおそれがあるものであるとき。
 危険を生ずるおそれがあるものであるとき。
 前項の規定により物品の処分を求めた場合において、在所者が相当の期間内にその処分をしないときは、少年鑑別所の長は、これを売却してその代金を領置する。ただし、売却することができないものは、廃棄することができる。

第四十七条  少年鑑別所の長は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が被観護在所者である場合であって、当該現金若しくは物品が次の各号のいずれにも該当しないとき、又は当該物品が刑事訴訟法少年法 において準用する場合を含む。次項において同じ。)の定めるところにより被観護在所者が交付を受けることが許されないものであるときは、その現金又は物品を持参し、又は送付した者(以下「差入人」という。)に対し、その引取りを求めるものとする。
 被観護在所者の保護者等が持参し、又は送付したものであるとき。
 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、修学又は就業の準備その他の被観護在所者の身分上、法律上、教育上又は職業上の重大な利害に係る用務の処理のため被観護在所者が交付を受けることが必要なものであるとき。
 前項の規定にかかわらず、少年鑑別所の長は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が被観護在所者である場合であって、当該現金又は物品が同項各号のいずれにも該当しないときにおいて、健全な社会生活を営むために必要な援助を受けることその他被観護在所者がその交付を受けることを必要とする事情があり、かつ、次の各号(交付の相手方が鑑別対象者でない場合にあっては、第四号を除く。)のいずれにも該当すると認めるときは、同項の規定による引取りを求めないことができる。ただし、当該物品が刑事訴訟法 の定めるところにより被観護在所者が交付を受けることが許されないものであるときは、この限りでない。
 交付により、少年鑑別所の規律及び秩序を害するおそれがないとき。
 交付により、被観護在所者の保護事件又は刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがないとき。
 交付により、被観護在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれがないとき。
 交付により、被観護在所者の鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがないとき。
 第一項の規定による引取りを求めることとした現金又は物品について、差入人の所在が明らかでないため同項の規定による引取りを求めることができないときは、少年鑑別所の長は、その旨を政令で定める方法によって公告しなければならない。
 前項に規定する現金又は物品について、第一項の規定による引取りを求め、又は前項の規定により公告した日から起算して六月を経過する日までに差入人がその現金又は物品の引取りをしないときは、その現金又は物品は、国庫に帰属する。
 第三項に規定する物品であって、前条第一項各号のいずれかに該当するものについては、少年鑑別所の長は、前項の期間内でも、これを売却してその代金を保管することができる。ただし、売却できないものは、廃棄することができる。

第四十八条  少年鑑別所の長は、第四十五条第三号に掲げる物品(前条第一項の規定による引取りを求めることとした物品を除く。)の交付の相手方が被観護在所者である場合であって、当該物品が次の各号のいずれかに該当するときは、差入人に対し、その引取りを求めるものとする。
 自弁により使用し、若しくは摂取することができることとされる物品又は退所の際に必要と認められる物品(第五十五条及び第六十条において「自弁物品等」という。)以外の物品であるとき。
 第四十六条第一項各号のいずれかに該当する物品であるとき。
 前項の規定による引取りを求めることとした物品について、差入人の所在が明らかでないため同項の規定による引取りを求めることができないとき、若しくはその引取りを求めることが相当でないとき、又は差入人がその引取りを拒んだときは、少年鑑別所の長は、被観護在所者に対し、その保護者等その他相当と認める者への交付その他相当の処分を求めるものとする。
 第四十六条第二項の規定は、前項の規定により処分を求めた場合について準用する。

第四十九条  少年鑑別所の長は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が被観護在所者である場合であって、第四十七条第一項又は前条第一項の規定による引取りを求めないこととしたときにおいて、被観護在所者がその交付を受けることを拒んだときは、差入人に対し、その引取りを求めるものとする。この場合においては、第四十七条第三項及び第四項の規定を準用する。

第五十条  少年鑑別所の長は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が未決在所者(被観護在所者としての地位を有するものを除く。以下この条において同じ。)である場合であって、当該現金又は物品が次の各号のいずれかに該当するときは、差入人に対し、その引取りを求めるものとする。
 交付(差入人が未決在所者の保護者等であるものを除く。第三号において同じ。)により、少年鑑別所の規律及び秩序を害するおそれがあるものであるとき。
 刑事訴訟法 の定めるところにより未決在所者が交付を受けることが許されない物品であるとき。
 交付により、未決在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれがあるものであるとき。
 差入人の氏名が明らかでないものであるとき。
 前三条(第四十七条第一項及び第二項を除く。)の規定は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が未決在所者である場合について準用する。この場合において、第四十七条第三項及び第四項中「第一項」とあり、並びに第四十八条第一項中「前条第一項」とあるのは「第五十条第一項」と、前条中「第四十七条第一項」とあるのは「次条第一項」と読み替えるものとする。

第五十一条  少年鑑別所の長は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が在院中在所者である場合であって、当該現金又は物品が次の各号のいずれにも該当しないときは、差入人に対し、その引取りを求めるものとする。
 在院中在所者の保護者等が持参し、又は送付したものであるとき。
 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、修学又は就業の準備その他の在院中在所者の身分上、法律上、教育上又は職業上の重大な利害に係る用務の処理のため在院中在所者が交付を受けることが必要なものであるとき。
 在院中在所者が交付を受けることが、その改善更生に資すると認められるものであるとき。
 前項の規定にかかわらず、少年鑑別所の長は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が在院中在所者である場合であって、当該現金又は物品が同項各号のいずれにも該当しないときにおいて、健全な社会生活を営むために必要な援助を受けることその他在院中在所者がその交付を受けることを必要とする事情があり、かつ、次の各号(交付の相手方が鑑別対象者でない場合にあっては、第三号を除く。)のいずれにも該当すると認めるときは、同項の規定による引取りを求めないことができる。
 交付により、少年鑑別所の規律及び秩序を害するおそれがないとき。
 交付により、在院中在所者の改善更生に支障を生ずるおそれがないとき。
 交付により、在院中在所者の鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがないとき。
 第四十七条から第四十九条まで(第四十七条第一項及び第二項を除く。)の規定は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が在院中在所者である場合について準用する。この場合において、第四十七条第三項及び第四項中「第一項」とあり、第四十八条第一項中「前条第一項」とあり、並びに第四十九条中「第四十七条第一項」とあるのは、「第五十一条第一項」と読み替えるものとする。

第五十二条  第四十七条から第四十九条まで(第四十七条第二項ただし書及び第二号を除く。)の規定は、第四十五条第三号に掲げる現金又は物品の交付の相手方が各種在所者である場合について準用する。この場合において、第四十七条第一項中「とき、又は当該物品が刑事訴訟法少年法 において準用する場合を含む。次項において同じ。)の定めるところにより被観護在所者が交付を受けることが許されないものであるとき」とあるのは、「とき」と読み替えるものとする。

第五十三条  次に掲げる金品は、少年鑑別所の長が領置する。
 第四十五条第一号又は第二号に掲げる物品であって、第四十六条第一項各号のいずれにも該当しないもの
 第四十五条第三号に掲げる物品であって、第四十七条第一項(前条において準用する場合を含む。)、第四十八条第一項(第五十条第二項、第五十一条第三項及び前条において準用する場合を含む。)、第五十条第一項又は第五十一条第一項の規定による引取りを求めないこととしたもの(在所者が交付を受けることを拒んだ物品を除く。)
 第四十五条各号に掲げる現金であって、第四十七条第一項(前条において準用する場合を含む。)、第五十条第一項又は第五十一条第一項の規定による引取りを求めないこととしたもの
 少年鑑別所の長は、在所者について領置している物品(法務省令で定めるものを除く。)の総量(第五十五条第一号において「領置総量」という。)が領置限度量(在所者としての地位の別ごとに在所者一人当たりについて領置することができる物品の量として少年鑑別所の長が定める量をいう。同号において同じ。)を超えるときは、当該在所者に対し、その超過量に相当する量の物品について、その保護者等その他相当と認める者への交付その他相当の処分を求めることができる。腐敗し、又は滅失するおそれが生じた物品についても、同様とする。
 第四十六条第二項の規定は、前項の規定により処分を求めた場合について準用する。

第五十四条  少年鑑別所の長は、在所者について領置している物品のうち、この法律の規定により在所者が使用し、又は摂取することができるものについて、在所者がその引渡しを求めた場合には、法務省令で定めるところにより、これを引き渡すものとする。ただし、その者が所持する物品の総量が次項の規定により所持することができる物品の量を超えることとなる場合は、この限りでない。
 少年鑑別所の長は、法務省令で定めるところにより、前項本文の規定により在所者が引渡しを受けて所持する物品及び在所者が受けた信書でその保管するものに関し、これらを所持し、又は保管する方法並びに所持することができる物品の量及び保管することができる信書の通数について、少年鑑別所の管理運営上必要な制限をすることができる。
 少年鑑別所の長は、第一項本文の規定により在所者が引渡しを受けて所持する物品又は在所者が受けた信書でその保管するものについて、その者が、少年鑑別所の長においてその物品の引渡しを受け、又はその信書を領置することを求めた場合には、その引渡しを受け、又は領置するものとする。
 少年鑑別所の長は、第一項本文の規定により在所者が引渡しを受けて所持する物品又は在所者が受けた信書でその保管するものについて、在所者が第二項の規定による制限に違反したときは、その物品を取り上げること又はその信書を取り上げて領置することができる。

第五十五条  少年鑑別所の長は、在所者が、自弁物品等を購入し、又は少年鑑別所における日常生活上自ら負担すべき費用に充てるため、領置されている現金を使用することを申請した場合には、必要な金額の現金の使用を許すものとする。ただし、自弁物品等を購入するための現金の使用については、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
 購入により、領置総量が領置限度量を超えることとなるとき。
 在所者が被観護在所者又は未決在所者である場合において、刑事訴訟法少年法 において準用する場合を含む。)の定めるところにより購入する自弁物品等の交付を受けることが許されないとき。

第五十六条  少年鑑別所の長は、被観護在所者が、領置されている金品(第九十八条に規定する文書図画に該当するものを除く。次項において同じ。)について、他の者(当該少年鑑別所に収容されている者を除く。同項及び次条から第五十九条までにおいて同じ。)への交付(信書の発信に該当するものを除く。同項及び次条から第五十九条までにおいて同じ。)を申請した場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、これを許すものとする。ただし、当該物品が刑事訴訟法少年法 において準用する場合を含む。同項において同じ。)の定めるところにより交付が許されないものであるときは、この限りでない。
 被観護在所者の保護者等に交付するとき。
 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、修学又は就業の準備その他の被観護在所者の身分上、法律上、教育上又は職業上の重大な利害に係る用務の処理のため被観護在所者が交付することが必要であるとき。
 少年鑑別所の長は、被観護在所者が、領置されている金品について、他の者への交付を申請した場合であって、前項各号のいずれにも該当しないときにおいて、健全な社会生活を営むために必要な援助を受けることその他被観護在所者がその金品を交付することを必要とする事情があり、かつ、次の各号(被観護在所者が鑑別対象者でない場合にあっては、第四号を除く。)のいずれにも該当すると認めるときは、これを許すことができる。ただし、当該物品が刑事訴訟法 の定めるところにより交付が許されないものであるときは、この限りでない。
 交付により、少年鑑別所の規律及び秩序を害するおそれがないとき。
 交付により、被観護在所者の保護事件又は刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがないとき。
 交付により、被観護在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれがないとき。
 交付により、被観護在所者の鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがないとき。

第五十七条  少年鑑別所の長は、未決在所者(被観護在所者としての地位を有するものを除く。)が、領置されている金品(第九十九条において準用する第九十八条に規定する文書図画に該当するものを除く。)について、他の者への交付を申請した場合には、次の各号のいずれかに該当するときを除き、これを許すものとする。
 交付(その相手方が未決在所者の保護者等であるものを除く。第三号において同じ。)により、少年鑑別所の規律及び秩序を害するおそれがあるとき。
 刑事訴訟法 の定めるところにより交付が許されない物品であるとき。
 交付により、未決在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれがあるとき。

第五十八条  少年鑑別所の長は、在院中在所者が、領置されている金品(第百三条において準用する第九十八条に規定する文書図画に該当するものを除く。次項において同じ。)について、他の者への交付を申請した場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、これを許すものとする。
 在院中在所者の保護者等に交付するとき。
 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、修学又は就業の準備その他の在院中在所者の身分上、法律上、教育上又は職業上の重大な利害に係る用務の処理のため在院中在所者が交付することが必要であるとき。
 在院中在所者が交付することが、その改善更生に資すると認められるとき。
 少年鑑別所の長は、在院中在所者が、領置されている金品について、他の者への交付を申請した場合であって、前項各号のいずれにも該当しないときにおいて、健全な社会生活を営むために必要な援助を受けることその他在院中在所者がその金品を交付することを必要とする事情があり、かつ、次の各号(在院中在所者が鑑別対象者でない場合にあっては、第三号を除く。)のいずれにも該当すると認めるときは、これを許すことができる。
 交付により、少年鑑別所の規律及び秩序を害するおそれがないとき。
 交付により、在院中在所者の改善更生に支障を生ずるおそれがないとき。
 交付により、在院中在所者の鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがないとき。

第五十九条  第五十六条(第一項ただし書並びに第二項ただし書及び第二号を除く。)の規定は、各種在所者が領置されている金品(第百四条において準用する第九十八条に規定する文書図画に該当するものを除く。)について他の者への交付を申請した場合について準用する。

第六十条  少年鑑別所の長は、この節に定めるもののほか、法務省令で定めるところにより、差入人による在所者に対する金品の交付及び在所者による自弁物品等の購入について、少年鑑別所の管理運営上必要な制限をすることができる。

第六十一条  少年鑑別所の長は、在所者の退所の際、領置している金品をその者又はその親権を行う者等に引き渡すものとする。

第六十二条  退所した在所者の遺留物(少年鑑別所に遺留した金品をいう。以下同じ。)は、その退所の日から起算して六月を経過する日までに、その者又はその親権を行う者等からその引渡しを求める申出がなく、又はその引渡しに要する費用の提供がないときは、国庫に帰属する。
 前項の期間内でも、少年鑑別所の長は、腐敗し、又は滅失するおそれが生じた遺留物は、廃棄することができる。

第六十三条  在所者が次の各号のいずれかに該当する場合において、当該各号に定める日から起算して六月を経過する日までに、その者又はその親権を行う者等から引渡しを求める申出がなく、又は引渡しに要する費用の提供がないときは、その遺留物は、国庫に帰属する。
 逃走したとき 逃走した日
 第七十九条第二項の規定により解放された場合において、同条第三項に規定する避難を必要とする状況がなくなった後速やかに同項に規定する場所に出頭しなかったとき 避難を必要とする状況がなくなった日
 前条第二項の規定は、前項の遺留物について準用する。

第六十四条  死亡した在所者の遺留物は、法務省令で定めるところにより、その遺族等(法務省令で定める遺族その他の者をいう。以下同じ。)に対し、その申請に基づき、引き渡すものとする。
 死亡した在所者の遺留物がある場合において、その遺族等の所在が明らかでないため第百二十九条の規定による通知をすることができないときは、少年鑑別所の長は、その旨を政令で定める方法によって公告しなければならない。
 第一項の遺留物は、第百二十九条の規定による通知をし、又は前項の規定により公告をした日から起算して六月を経過する日までに第一項の申請がないときは、国庫に帰属する。
 第六十二条第二項の規定は、第一項の遺留物について準用する。

    第八節 書籍等の閲覧等

第六十五条  少年鑑別所の長は、在所者の健全な育成を図るのにふさわしい書籍等の整備に努め、在所者が学習、娯楽等の目的で自主的にこれを閲覧する機会を与えるものとする。
 前項に規定する閲覧の方法は、少年鑑別所の長が定める。

第六十六条  在院中在所者以外の在所者が自弁の書籍等及び新聞紙を閲覧することは、この条及び第六十八条の規定による場合のほか、これを禁止し、又は制限してはならない。
 少年鑑別所の長は、在院中在所者以外の在所者が自弁の書籍等又は新聞紙を閲覧することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、その閲覧を禁止することができる。
 少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。
 在院中在所者以外の在所者が被観護在所者又は未決在所者である場合において、その保護事件又は刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがあるとき。
 在院中在所者以外の在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれがあるとき。
 在院中在所者以外の在所者が鑑別対象者である場合において、その鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。
 前項の規定により閲覧を禁止すべき事由の有無を確認するため自弁の書籍等又は新聞紙の翻訳が必要であるときは、法務省令で定めるところにより、在院中在所者以外の在所者にその費用を負担させることができる。この場合において、その者が負担すべき費用を負担しないときは、その閲覧を禁止する。

第六十七条  少年鑑別所の長は、在院中在所者が、自弁の書籍等又は新聞紙を閲覧したい旨の申出をした場合において、次の各号(在院中在所者が鑑別対象者でない場合にあっては、第三号を除く。)のいずれにも該当すると認めるときは、これを許すことができる。
 閲覧により、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがないとき。
 閲覧により、在院中在所者の改善更生に支障を生ずるおそれがないとき。
 閲覧により、在院中在所者の鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがないとき。
 少年鑑別所の長は、前項の規定により閲覧を許すか否かを判断するに当たっては、書籍等及び新聞紙の閲覧が、一般に、青少年の健全な育成に資するものであることに留意しなければならない。
 第一項の規定により閲覧を許すか否かを判断するため自弁の書籍等又は新聞紙の翻訳が必要であるときは、法務省令で定めるところにより、在院中在所者にその費用を負担させることができる。この場合において、その者が負担すべき費用を負担しないときは、その閲覧を許さない。

第六十八条  少年鑑別所の長は、法務省令で定めるところにより、在所者が取得することができる新聞紙の範囲及び取得方法について、少年鑑別所の管理運営上必要な制限をすることができる。

第六十九条  少年鑑別所の長は、在所者に対し、日刊新聞紙の備付け、報道番組の放送その他の方法により、できる限り、主要な時事の報道に接する機会を与えるように努めなければならない。

    第九節 宗教上の行為等

第七十条  在所者が一人で行う礼拝その他の宗教上の行為は、これを禁止し、又は制限してはならない。ただし、少年鑑別所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合は、この限りでない。

第七十一条  少年鑑別所の長は、在所者が宗教家(民間の篤志家に限る。以下この項において同じ。)の行う宗教上の儀式行事に参加し、又は宗教家の行う宗教上の教誨を受けることができる機会を設けるように努めなければならない。
 少年鑑別所の長は、少年鑑別所の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合には、在所者に前項に規定する儀式行事に参加させず、又は同項に規定する教誨を受けさせないことができる。

    第十節 規律及び秩序の維持

第七十二条  少年鑑別所の規律及び秩序は、在所者の観護処遇及び鑑別の適切な実施を確保し、並びにその健全な育成を図るのにふさわしい安全かつ平穏な環境を保持することができるよう、適正に維持されなければならない。
 前項の目的を達成するため執る措置は、そのために必要な限度を超えてはならない。

第七十三条  少年鑑別所の長は、在所者が遵守すべき事項(次項において「遵守事項」という。)を定める。
 遵守事項は、在所者としての地位に応じ、次に掲げる事項を具体的に定めるものとする。
 犯罪行為をしてはならないこと。
 他人に対し、粗野若しくは乱暴な言動をし、又は迷惑を及ぼす行為をしてはならないこと。
 自身を傷つける行為をしてはならないこと。
 少年鑑別所の職員の職務の執行を妨げる行為をしてはならないこと。
 自己又は他の在所者の収容の確保を妨げるおそれのある行為をしてはならないこと。
 少年鑑別所の安全を害するおそれのある行為をしてはならないこと。
 少年鑑別所内の衛生又は風紀を害する行為をしてはならないこと。
 金品について、不正な使用、所持、授受その他の行為をしてはならないこと。
 前各号に掲げるもののほか、少年鑑別所の規律及び秩序を維持するため必要な事項
 前各号に掲げる事項について定めた遵守事項に違反する行為を企て、あおり、唆し、又は援助してはならないこと。
 前二項のほか、少年鑑別所の長又はその指定する職員は、少年鑑別所の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、在所者に対し、その生活及び行動について指示することができる。

第七十四条  指定職員は、少年鑑別所の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、在所者について、その身体、着衣、所持品及び居室を検査し、並びにその所持品を取り上げて一時保管することができる。
 第二十四条第二項の規定は、前項の規定による女子の在所者の身体及び着衣の検査について準用する。
 指定職員は、少年鑑別所の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、少年鑑別所内において、在所者以外の者(弁護士である付添人若しくは在所者若しくはその保護者の依頼により付添人となろうとする弁護士又は弁護人等(弁護人又は刑事訴訟法第三十九条第一項 に規定する弁護人となろうとする者をいう。以下同じ。)を除く。)の着衣及び携帯品を検査し、並びにその者の携帯品を取り上げて一時保管することができる。
 前項の検査は、文書図画の内容の検査に及んではならない。

第七十五条  指定職員は、在所者が自身を傷つけ若しくは他人に危害を加え、逃走し、少年鑑別所の職員の職務の執行を妨げ、その他少年鑑別所の規律及び秩序を著しく害する行為をし、又はこれらの行為をしようとする場合には、合理的に必要と判断される限度で、その行為を制止し、その在所者を拘束し、その他その行為を抑止するため必要な措置を執ることができる。
 指定職員は、在所者以外の者が次の各号のいずれかに該当する場合には、合理的に必要と判断される限度で、その行為を制止し、その行為をする者を拘束し、その他その行為を抑止するため必要な措置を執ることができる。
 少年鑑別所に侵入し、その設備を損壊し、少年鑑別所の職員の職務執行を妨げ、又はこれらの行為をまさにしようとするとき。
 指定職員の要求を受けたのに少年鑑別所から退去しないとき。
 在所者の逃走又は少年鑑別所の職員の職務執行の妨害を、現場で、援助し、あおり、又は唆すとき。
 在所者に危害を加え、又はまさに加えようとするとき。
 前二項の措置に必要な警備用具については、法務省令で定める。

第七十六条  指定職員は、在所者を護送するとき、又は在所者が次の各号のいずれかの行為をするおそれがある場合において、やむを得ないときは、少年鑑別所の長の命令により、法務省令で定めるところにより、手錠(手錠に附属するひもがある場合にはこれを含む。以下この条及び第百十条第一項第五号において同じ。)を使用することができる。
 逃走すること。
 自身を傷つけ、又は他人に危害を加えること。
 少年鑑別所の設備、器具その他の物を損壊すること。
 前項に規定する場合において、少年鑑別所の長の命令を待ついとまがないときは、指定職員は、その命令を待たないで、手錠を使用することができる。この場合には、速やかに、その旨を少年鑑別所の長に報告しなければならない。
 在所者を護送する際に手錠を使用するに当たっては、その名誉をいたずらに害することのないように配慮しなければならない。
 手錠の制式は、法務省令で定める。

第七十七条  指定職員は、在所者が次の各号のいずれかに該当する場合において、やむを得ないときは、少年鑑別所の長の命令により、その者を保護室に収容することができる。
 自身を傷つけるおそれがあるとき。
 次のイからハまでのいずれかに該当する場合において、少年鑑別所の規律及び秩序を維持するため特に必要があるとき。
 指定職員の制止に従わず、大声又は騒音を発するとき。
 他人に危害を加えるおそれがあるとき。
 少年鑑別所の設備、器具その他の物を損壊し、又は汚損するおそれがあるとき。
 前項に規定する場合において、少年鑑別所の長の命令を待ついとまがないときは、指定職員は、その命令を待たないで、その在所者を保護室に収容することができる。この場合には、速やかに、その旨を少年鑑別所の長に報告しなければならない。
 保護室への収容の期間は、七十二時間以内とする。ただし、特に継続の必要がある場合には、少年鑑別所の長は、四十八時間ごとにこれを更新することができる。
 保護室に収容されている在所者に対しては、その心情の安定を図るための適切な働き掛けを行うように努めなければならない。
 少年鑑別所の長は、第三項の期間中であっても、保護室への収容の必要がなくなったときは、直ちにその収容を中止させなければならない。
 在所者を保護室に収容し、又はその収容の期間を更新した場合には、少年鑑別所の長は、速やかに、その在所者の健康状態について、少年鑑別所の職員である医師又は少年鑑別所の長が委嘱する医師の意見を聴かなければならない。
 保護室の構造及び設備の基準は、法務省令で定める。

第七十八条  指定職員は、在所者が逃走した場合には、これを連れ戻すことができる。ただし、逃走の時から四十八時間を経過した後は、被観護措置者等(観護の措置(当該措置が少年法第四十三条第一項 の規定による請求により執られたものである場合において、事件が家庭裁判所に送致されていないときを除く。)が執られて収容されている者、少年院法第二条第二号 に規定する保護処分在院者としての地位を有する在所者及び少年法第二十六条の二 の規定により収容されている者をいう。以下この項及び次条第四項において同じ。)にあっては裁判官のあらかじめ発する連戻状によらなければ連戻しに着手することができず、被観護措置者等以外の在所者にあっては連戻しに着手することができない。
 前項の規定による連戻しが困難である場合には、少年鑑別所の長は、警察官に対して連戻しのための援助を求めることができる。この場合において、援助を求められた警察官については、同項の規定を準用する。
 第一項ただし書(前項において準用する場合を含む。)の連戻状は、少年鑑別所の長の請求により、その少年鑑別所の所在地を管轄する家庭裁判所の裁判官が発する。この場合においては、少年法第四条 及び第三十六条 の規定を準用する。

第七十九条  少年鑑別所の長は、地震、火災その他の災害に際し、少年鑑別所内において避難の方法がないときは、在所者を適当な場所に護送しなければならない。
 前項の場合において、在所者を護送することができないときは、少年鑑別所の長は、その者を少年鑑別所から解放することができる。地震、火災その他の災害に際し、少年鑑別所の外にある在所者を避難させるため適当な場所に護送することができない場合も、同様とする。
 前項の規定により解放された者は、避難を必要とする状況がなくなった後速やかに、少年鑑別所又は少年鑑別所の長が指定した場所に出頭しなければならない。
 指定職員は、第二項の規定により解放された被観護措置者等が前項の規定に違反して少年鑑別所又は指定された場所に出頭しないときは、裁判官のあらかじめ発する連戻状により、その者を連れ戻すことができる。
 前項の規定による連戻しが困難である場合には、少年鑑別所の長は、警察官に対して連戻しのための援助を求めることができる。この場合において、援助を求められた警察官については、同項の規定を準用する。
 前条第三項の規定は、第四項(前項において準用する場合を含む。)の連戻状について準用する。

    第十一節 外部交通

     第一款 面会

      第一目 被観護在所者

第八十条  少年鑑別所の長は、被観護在所者に対し、次に掲げる者から面会の申出があったときは、第百七条第三項の規定により禁止される場合を除き、これを許すものとする。ただし、刑事訴訟法少年法 において準用する場合を含む。次項において同じ。)の定めるところにより面会が許されない場合は、この限りでない。
 被観護在所者の保護者等
 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、修学又は就業の準備その他の被観護在所者の身分上、法律上、教育上又は職業上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者
 少年鑑別所の長は、被観護在所者に対し、前項各号に掲げる者以外の者から面会の申出があった場合において、健全な社会生活を営むために必要な援助を受けることその他面会することを必要とする事情があり、かつ、次の各号(被観護在所者が鑑別対象者でない場合にあっては、第四号を除く。次条第一項において同じ。)のいずれにも該当すると認めるときは、これを許すことができる。ただし、刑事訴訟法 の定めるところにより面会が許されない場合は、この限りでない。
 面会により、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがないとき。
 面会により、被観護在所者の保護事件又は刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがないとき。
 面会により、被観護在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれがないとき。
 面会により、被観護在所者の鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがないとき。

第八十一条  少年鑑別所の長は、その指名する職員に、被観護在所者の面会(付添人等(付添人又は在所者若しくはその保護者の依頼により付添人となろうとする弁護士をいう。以下同じ。)又は弁護人等との面会を除く。)に立ち会わせ、又はその面会の状況を録音させ、若しくは録画させるものとする。ただし、前条第二項各号のいずれにも該当すると認めるときは、その立会い並びに録音及び録画(次項において「立会い等」という。)をさせないことができる。
 少年鑑別所の長は、前項の規定にかかわらず、被観護在所者の次に掲げる者との面会については、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果又は被観護在所者の保護事件若しくは刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合を除き、立会い等をさせてはならない。
 自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が受けた観護処遇又は鑑別に関し調査を行う国又は地方公共団体の機関の職員
 自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が受けた観護処遇又は鑑別に関し弁護士法 (昭和二十四年法律第二百五号)第三条第一項 に規定する職務を遂行する弁護士

第八十二条  少年鑑別所の職員は、次の各号のいずれか(付添人等又は弁護人等との面会の場合にあっては、第一号ロに限る。)に該当する場合には、その行為若しくは発言を制止し、又はその面会を一時停止させることができる。この場合においては、面会の一時停止のため、被観護在所者又は面会の相手方に対し面会の場所からの退出を命じ、その他必要な措置を執ることができる。
 被観護在所者又は面会の相手方が次のイ又はロのいずれかに該当する行為をするとき。
 次条第一項の規定による制限に違反する行為
 少年鑑別所の規律及び秩序を害する行為
 被観護在所者又は面会の相手方が次のイからトまでのいずれかに該当する内容の発言をするとき。
 暗号の使用その他の理由によって、少年鑑別所の職員が理解できないもの
 犯罪又は非行を助長し、又は誘発するもの
 少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれのあるもの
 被観護在所者の保護事件又は刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれのあるもの
 被観護在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれのあるもの
 特定の用務の処理のため必要であることを理由として許された面会において、その用務の処理のため必要な範囲を明らかに逸脱するもの
 被観護在所者が鑑別対象者である場合において、その鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれのあるもの
 少年鑑別所の長は、前項の規定により面会が一時停止された場合において、面会を継続させることが相当でないと認めるときは、その面会を終わらせることができる。

第八十三条  少年鑑別所の長は、被観護在所者の面会(付添人等又は弁護人等との面会を除く。)に関し、法務省令で定めるところにより、面会の相手方の人数、面会の場所、日及び時間帯、面会の時間及び回数その他面会の態様について、少年鑑別所の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。
 前項の規定により面会の回数について制限をするときは、その回数は、一日につき一回を下回ってはならない。

第八十四条  被観護在所者の付添人等又は弁護人等との面会の日及び時間帯は、日曜日その他政令で定める日以外の日の少年鑑別所の執務時間内とする。
 前項の面会の相手方の人数は、三人以内とする。
 少年鑑別所の長は、付添人等又は弁護人等から前二項の定めによらない面会の申出がある場合においても、少年鑑別所の管理運営上支障があるときを除き、これを許すものとする。
 少年鑑別所の長は、第一項の面会に関し、法務省令で定めるところにより、面会の場所について、少年鑑別所の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。

      第二目 未決在所者

第八十五条  少年鑑別所の長は、未決在所者(被観護在所者としての地位を有するものを除く。以下この目において同じ。)に対し、他の者から面会の申出があったときは、次項又は第百七条第三項の規定により禁止される場合を除き、これを許すものとする。ただし、刑事訴訟法 の定めるところにより面会が許されない場合は、この限りでない。
 少年鑑別所の長は、犯罪性のある者その他未決在所者が面会することにより、その健全な育成を著しく妨げるおそれがある者(未決在所者の保護者等を除く。)については、未決在所者がその者と面会することを禁止することができる。ただし、付添人等又は弁護人等と面会する場合及び被告人若しくは被疑者としての権利の保護又は訴訟の準備その他の権利の保護のために必要と認められる場合については、この限りでない。

第八十六条  少年鑑別所の長は、その指名する職員に、未決在所者の面会(付添人等又は弁護人等との面会を除く。)に立ち会わせ、又はその面会の状況を録音させ、若しくは録画させるものとする。ただし、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、その立会い並びに録音及び録画(次項において「立会い等」という。)をさせないことができる。
 面会により、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがないとき。
 面会により、未決在所者の刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがないとき。
 面会により、未決在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれがないとき。
 少年鑑別所の長は、前項の規定にかかわらず、未決在所者の次に掲げる者との面会については、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果又は未決在所者の刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合を除き、立会い等をさせてはならない。
 自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が受けた観護処遇に関し調査を行う国又は地方公共団体の機関の職員
 自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が受けた観護処遇に関し弁護士法第三条第一項 に規定する職務を遂行する弁護士

第八十七条  第八十二条から第八十四条まで(第八十二条第一項第二号ヘ及びトを除く。)の規定は、未決在所者の面会について準用する。この場合において、同号ニ中「保護事件又は刑事事件」とあるのは、「刑事事件」と読み替えるものとする。

      第三目 在院中在所者

第八十八条  少年鑑別所の長は、在院中在所者に対し、次に掲げる者から面会の申出があったときは、第百七条第三項の規定により禁止される場合を除き、これを許すものとする。
 在院中在所者の保護者等
 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、修学又は就業の準備その他の在院中在所者の身分上、法律上、教育上又は職業上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者
 在院中在所者の更生保護に関係のある者その他の面会により在院中在所者の改善更生に資すると認められる者
 少年鑑別所の長は、在院中在所者に対し、前項各号に掲げる者以外の者から面会の申出があった場合において、健全な社会生活を営むために必要な援助を受けることその他面会することを必要とする事情があり、かつ、次の各号(在院中在所者が鑑別対象者でない場合にあっては、第三号を除く。次条第一項において同じ。)のいずれにも該当すると認めるときは、これを許すことができる。
 面会により、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがないとき。
 面会により、在院中在所者の改善更生に支障を生ずるおそれがないとき。
 面会により、在院中在所者の鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがないとき。

第八十九条  少年鑑別所の長は、その指名する職員に、在院中在所者の面会(付添人等又は弁護人等との面会を除く。)に立ち会わせ、又はその面会の状況を録音させ、若しくは録画させるものとする。ただし、前条第二項各号のいずれにも該当すると認めるときは、その立会い並びに録音及び録画(次項において「立会い等」という。)をさせないことができる。
 少年鑑別所の長は、前項の規定にかかわらず、在院中在所者の次に掲げる者との面会については、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合を除き、立会い等をさせてはならない。
 自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が少年鑑別所において受けた観護処遇若しくは鑑別又は自己に対する少年院の長の措置その他自己が少年院において受けた処遇に関し調査を行う国又は地方公共団体の機関の職員
 自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が少年鑑別所において受けた観護処遇若しくは鑑別又は自己に対する少年院の長の措置その他自己が少年院において受けた処遇に関し弁護士法第三条第一項 に規定する職務を遂行する弁護士

第九十条  第八十二条から第八十四条まで(第八十二条第一項第二号ニを除く。)の規定は、在院中在所者の面会について準用する。この場合において、同号ホ中「健全な育成を著しく妨げる」とあるのは、「改善更生に支障を生ずる」と読み替えるものとする。

      第四目 各種在所者

第九十一条  第一目(第八十条第一項ただし書並びに第二項ただし書及び第二号並びに第八十二条第一項第二号ニを除く。)の規定は、各種在所者の面会について準用する。この場合において、第八十一条第一項中「前条第二項各号」とあるのは「前条第二項各号(第二号を除く。)」と、同条第二項中「結果又は被観護在所者の保護事件若しくは刑事事件に関する証拠の隠滅の結果」とあるのは「結果」と読み替えるものとする。

     第二款 信書の発受

      第一目 被観護在所者

第九十二条  少年鑑別所の長は、被観護在所者に対し、この目又は第百七条第三項の規定により禁止される場合を除き、他の者との間で信書を発受することを許すものとする。ただし、刑事訴訟法少年法 において準用する場合を含む。)の定めるところにより信書の発受が許されない場合は、この限りでない。

第九十三条  少年鑑別所の長は、その指名する職員に、被観護在所者が発受する信書について、検査を行わせるものとする。
 次に掲げる信書については、前項の検査は、これらの信書に該当することを確認するために必要な限度において行うものとする。ただし、第三号に掲げる信書について、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果又は被観護在所者の保護事件若しくは刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合は、この限りでない。
 被観護在所者が付添人等又は弁護人等から受ける信書
 被観護在所者が国又は地方公共団体の機関から受ける信書
 被観護在所者が自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が受けた観護処遇又は鑑別に関し弁護士法第三条第一項 に規定する職務を遂行する弁護士(弁護士法人を含む。以下この款において同じ。)から受ける信書
 少年鑑別所の長は、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生じ、又は被観護在所者の保護事件若しくは刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがないと認める場合には、前二項の規定にかかわらず、第一項の検査を行わせないことができる。

第九十四条  少年鑑別所の長は、前条の規定による検査の結果、被観護在所者が発受する信書について、その全部又は一部が次の各号のいずれかに該当する場合には、その発受を差し止め、又はその該当箇所を削除し、若しくは抹消することができる。同条第二項各号に掲げる信書について、これらの信書に該当することを確認する過程においてその全部又は一部が次の各号のいずれかに該当することが判明した場合も、同様とする。
 暗号の使用その他の理由によって、少年鑑別所の職員が理解できない内容のものであるとき。
 発受によって、刑罰法令に触れる行為をすることとなり、又は犯罪若しくは非行を助長し、若しくは誘発するおそれがあるとき。
 発受によって、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。
 威迫にわたる記述又は明らかな虚偽の記述があるため、受信者を著しく不安にさせ、又は受信者に損害を被らせるおそれがあるとき。
 受信者を著しく侮辱する記述があるとき。
 発受によって、被観護在所者の保護事件又は刑事事件に関する証拠の隠滅の結果を生ずるおそれがあるとき。
 発受によって、被観護在所者の健全な育成を著しく妨げるおそれがあるとき。
 被観護在所者が鑑別対象者である場合において、発受によって、その鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。
 前項の規定にかかわらず、被観護在所者が国又は地方公共団体の機関との間で発受する信書であってその機関の権限に属する事項を含むもの及び被観護在所者が弁護士との間で発受する信書であってその被観護在所者に係る弁護士法第三条第一項 に規定する弁護士の職務に属する事項を含むものについては、その発受の差止め又はその事項に係る部分の削除若しくは抹消は、その部分の全部又は一部が前項第一号から第三号まで又は第六号のいずれかに該当する場合に限り、これを行うことができる。

第九十五条  少年鑑別所の長は、法務省令で定めるところにより、被観護在所者が発する信書の作成要領、その発信の申請の日及び時間帯、被観護在所者が発信を申請する信書(付添人等又は弁護人等に対して発するものを除く。)の通数並びに被観護在所者の信書の発受の方法について、少年鑑別所の管理運営上必要な制限をすることができる。
 前項の規定により被観護在所者が発信を申請する信書の通数について制限をするときは、その通数は、一日につき一通を下回ってはならない。

第九十六条  信書の発信に要する費用については、被観護在所者が負担することができない場合において、少年鑑別所の長が発信の目的に照らし相当と認めるときは、その全部又は一部を国庫の負担とする。

第九十七条  少年鑑別所の長は、第九十四条又は第百七条第三項の規定により信書の発受を差し止め、又は禁止した場合にはその信書を、第九十四条の規定により信書の一部を削除した場合にはその削除した部分を保管するものとする。
 少年鑑別所の長は、第九十四条の規定により信書の記述の一部を抹消する場合には、その抹消する部分の複製を作成し、これを保管するものとする。
 少年鑑別所の長は、被観護在所者の退所の際、前二項の規定により保管する信書の全部若しくは一部又は複製(以下「発受禁止信書等」という。)をその者又はその親権を行う者等に引き渡すものとする。
 少年鑑別所の長は、被観護在所者が死亡した場合には、法務省令で定めるところにより、その遺族等に対し、その申請に基づき、発受禁止信書等を引き渡すものとする。
 前二項の規定にかかわらず、発受禁止信書等の引渡しにより少年鑑別所の規律及び秩序の維持に支障を生ずるおそれがあるときは、これを引き渡さないものとする。次に掲げる場合において、その引渡しにより少年鑑別所の規律及び秩序の維持に支障を生ずるおそれがあるときも、同様とする。
 退所した被観護在所者又はその親権を行う者等が、被観護在所者の退所後に、発受禁止信書等の引渡しを求めたとき。
 被観護在所者が第六十三条第一項各号のいずれかに該当する場合において、その被観護在所者又はその親権を行う者等が、発受禁止信書等の引渡しを求めたとき。
 第六十二条第一項、第六十三条第一項並びに第六十四条第二項及び第三項の規定は、被観護在所者に係る発受禁止信書等(前項の規定により引き渡さないこととされたものを除く。)について準用する。この場合において、同条第三項中「第一項の申請」とあるのは、「第九十七条第四項の申請」と読み替えるものとする。
 第五項の規定により引き渡さないこととした発受禁止信書等は、被観護在所者の退所若しくは死亡の日又は被観護在所者が第六十三条第一項各号のいずれかに該当することとなった日から起算して三年を経過した日に、国庫に帰属する。

第九十八条  少年鑑別所の長は、被観護在所者が、その作成した文書図画(信書を除く。)を他の者に交付することを申請した場合には、その交付につき、被観護在所者が発する信書に準じて検査その他の措置を執ることができる。

      第二目 未決在所者

第九十九条  前目(第九十四条第一項第八号を除く。)の規定は、未決在所者(被観護在所者としての地位を有するものを除く。)が発受する信書について準用する。この場合において、第九十二条ただし書中「刑事訴訟法少年法 において準用する場合を含む。)」とあるのは「刑事訴訟法 」と、第九十三条第二項ただし書及び第三項中「保護事件若しくは刑事事件」とあり、並びに第九十四条第一項第六号中「保護事件又は刑事事件」とあるのは「刑事事件」と、第九十三条第二項第三号中「観護処遇又は鑑別」とあるのは「観護処遇」と読み替えるものとする。

      第三目 在院中在所者

第百条  少年鑑別所の長は、在院中在所者に対し、この目又は第百七条第三項の規定により禁止される場合を除き、他の者との間で信書を発受することを許すものとする。

第百一条  少年鑑別所の長は、その指名する職員に、在院中在所者が発受する信書について、検査を行わせるものとする。
 次に掲げる信書については、前項の検査は、これらの信書に該当することを確認するために必要な限度において行うものとする。ただし、第四号に掲げる信書について、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合は、この限りでない。
 在院中在所者が付添人等又は弁護人等から受ける信書
 在院中在所者が国又は地方公共団体の機関から受ける信書
 在院中在所者が自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が少年鑑別所において受けた観護処遇若しくは鑑別又は自己に対する少年院の長の措置その他自己が少年院において受けた処遇に関し調査を行う国又は地方公共団体の機関に対して発する信書
 在院中在所者が自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が少年鑑別所において受けた観護処遇若しくは鑑別又は自己に対する少年院の長の措置その他自己が少年院において受けた処遇に関し弁護士法第三条第一項 に規定する職務を遂行する弁護士との間で発受する信書
 少年鑑別所の長は、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生じ、又は在院中在所者の改善更生に支障を生ずるおそれがないと認める場合には、前二項の規定にかかわらず、第一項の検査を行わせないことができる。

第百二条  少年鑑別所の長は、犯罪性のある者その他在院中在所者が信書を発受することにより、少年鑑別所の規律及び秩序を害し、又は在院中在所者の改善更生に支障を生ずるおそれがある者(在院中在所者の保護者等を除く。)については、在院中在所者がその者との間で信書を発受することを禁止することができる。ただし、婚姻関係の調整、訴訟の遂行、修学又は就業の準備その他の在院中在所者の身分上、法律上、教育上又は職業上の重大な利害に係る用務の処理のため信書を発受する場合は、この限りでない。

第百三条  第九十四条から第九十八条まで(第九十四条第一項第六号を除く。)の規定は、在院中在所者が発受する信書について準用する。この場合において、同項中「前条」とあるのは「第百一条」と、同項第七号中「健全な育成を著しく妨げる」とあるのは「改善更生に支障を生ずる」と、第九十四条第二項中「第三号まで又は第六号」とあるのは「第三号まで」と、第九十七条第一項中「又は第百七条第三項」とあるのは「、第百二条又は第百七条第三項」と、同条第五項中「生ずる」とあるのは「生じ、又は在院中在所者の犯罪若しくは非行を助長し、若しくは誘発する」と読み替えるものとする。

      第四目 各種在所者

第百四条  第九十二条本文、第九十四条から第九十八条まで(第九十四条第一項第六号を除く。)及び第百一条の規定は、各種在所者が発受する信書について準用する。この場合において、同項中「前条」とあるのは「第百四条において準用する第百一条」と、第九十四条第二項中「第三号まで又は第六号」とあるのは「第三号まで」と、第百一条第二項第三号及び第四号中「若しくは鑑別又は自己に対する少年院の長の措置その他自己が少年院において受けた処遇」とあるのは「又は鑑別」と、同条第三項中「結果を生じ、又は在院中在所者の改善更生に支障」とあるのは「結果」と読み替えるものとする。

     第三款 電話等による通信

第百五条  少年鑑別所の長は、在院中在所者に対し、その改善更生又は円滑な社会復帰に資すると認めるとき、その他相当と認めるときは、第八十八条第一項各号に掲げる者との間において、電話その他政令で定める電気通信の方法による通信を行うことを許すことができる。
 第九十六条の規定は、前項の通信について準用する。

第百六条  少年鑑別所の長は、その指名する職員に、前条第一項の通信の内容を確認するため、その通信を受けさせ、又はその内容を記録させるものとする。ただし、次の各号(在院中在所者が鑑別対象者でない場合にあっては、第三号を除く。)のいずれにも該当すると認めるときは、この限りでない。
 通信により、少年鑑別所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがないとき。
 通信により、在院中在所者の改善更生に支障を生ずるおそれがないとき。
 通信により、在院中在所者の鑑別の適切な実施に支障を生ずるおそれがないとき。
 第八十二条(第一項第一号イ及び第二号ニを除く。)の規定は、在院中在所者による前条第一項の通信について準用する。この場合において、同号ホ中「健全な育成を著しく妨げる」とあるのは、「改善更生に支障を生ずる」と読み替えるものとする。

     第四款 雑則

第百七条  少年鑑別所の長は、在所者又はその面会等(面会又は第百五条第一項の通信をいう。以下この条において同じ。)の相手方が国語に通じない場合には、外国語による面会等を許すものとする。この場合において、発言又は通信の内容を確認するため通訳又は翻訳が必要であるときは、法務省令で定めるところにより、その在所者にその費用を負担させることができる。
 少年鑑別所の長は、在所者又はその信書の発受の相手方が国語に通じない場合その他相当と認める場合には、外国語による信書の発受を許すものとする。この場合において、信書の内容を確認するため翻訳が必要であるときは、法務省令で定めるところにより、その在所者にその費用を負担させることができる。
 在所者が前二項の規定により負担すべき費用を負担しないときは、その面会等又は信書の発受を許さない。

第百八条  この節に規定する面会及び信書の発受に関する事項について条約に別段の定めがあるときは、その規定による。

    第十二節 救済の申出等

     第一款 救済の申出

第百九条  在所者は、自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が受けた観護処遇又は鑑別について苦情があるときは、書面で、法務大臣に対し、救済を求める申出をすることができる。

第百十条  退所した者は、自己に対する第一号から第三号までに掲げる少年鑑別所の長の措置又は自己に対する第四号から第六号までに掲げる少年鑑別所の職員による行為について苦情があるときは、書面で、法務大臣に対し、救済を求める申出をすることができる。
 第六十六条第三項又は第六十七条第三項の規定による費用を負担させる処分
 第九十七条第五項前段(第九十九条、第百三条及び第百四条において準用する場合を含む。第百十五条第一項第九号において同じ。)の規定による発受禁止信書等の引渡しをしない処分(第九十七条第三項(第九十九条、第百三条及び第百四条において準用する場合を含む。)の規定による引渡しに係るものに限る。同号において同じ。)
 第百七条第一項又は第二項の規定による費用を負担させる処分
 身体に対する有形力の行使
 手錠の使用
 保護室への収容
 前項の規定による申出は、退所した日の翌日から起算して三十日以内にしなければならない。
 天災その他前項の期間内に第一項の規定による申出をしなかったことについてやむを得ない理由があるときは、前項の規定にかかわらず、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内に限り、その申出をすることができる。

第百十一条  第百九条又は前条第一項の規定による申出(以下「救済の申出」という。)は、これを行う者が自らしなければならない。

第百十二条  少年鑑別所の長の指名を受けた少年鑑別所の職員(次項及び第百二十条第一項において「相談員」という。)は、在所者に対し、救済の申出に関する相談に応じるものとする。
 相談員は、その相談によって知り得た救済の申出の内容をその少年鑑別所の他の職員に漏らしてはならない。

第百十三条  法務大臣は、職権で、救済の申出に関して必要な調査をするものとする。
 法務大臣は、前項の調査をするために必要があるときは、少年鑑別所の長に対し、報告若しくは資料その他の物件の提出を命じ、又はその指名する職員をして、救済の申出をした者その他の関係者に対し質問をさせ、若しくは物件の提出を求めさせ、これらの者が提出した物件を留め置かせ、若しくは検証を行わせることができる。

第百十四条  法務大臣は、救済の申出を受けたときは、これを誠実に処理するものとする。
 法務大臣は、救済の申出の内容が、その申出をした者に対する第百十条第一項第四号から第六号までに掲げる少年鑑別所の職員による行為に係るものである場合にあってはできる限り六十日以内に、それら以外のものである場合にあってはできる限り九十日以内にその処理を終えるよう努めるものとする。

第百十五条  法務大臣は、救済の申出の内容がその申出をした者に対する次に掲げる少年鑑別所の長の措置に係るものであって、その措置が違法又は不当であることを確認した場合において、必要があると認めるときは、その措置の全部又は一部を取り消し、又は変更するものとする。
 第三十七条第一項の規定による診療を受けることを許さない処分又は同条第四項の規定による診療の中止
 第四十二条第一項の規定による自弁の物品の使用又は摂取を許さない処分
 第五十五条の規定による領置されている現金の使用又は第五十六条(第五十九条において準用する場合を含む。)、第五十七条若しくは第五十八条の規定による領置されている金品の交付を許さない処分
 第六十六条第二項の規定による書籍等又は新聞紙の閲覧の禁止
 第六十六条第三項又は第六十七条第三項の規定による費用を負担させる処分
 第六十八条の規定による新聞紙の取得の制限
 第七十条に規定する宗教上の行為の禁止又は制限
 第九十四条、第九十五条第一項若しくは第九十八条(これらの規定を第九十九条、第百三条及び第百四条において準用する場合を含む。)の規定又は第百二条の規定による信書の発受又は文書図画の交付の禁止、差止め又は制限
 第九十七条第五項前段の規定による発受禁止信書等の引渡しをしない処分
 第百七条第一項又は第二項の規定による費用を負担させる処分
 法務大臣は、救済の申出の内容がその申出をした者に対する第百十条第一項第四号から第六号までに掲げる少年鑑別所の職員による行為に係るものであって、同項第四号に掲げる行為にあってはその行為が違法であることを、同項第五号又は第六号に掲げる行為にあってはその行為が違法又は不当であることを確認した場合において、必要があると認めるときは、同様の行為の再発の防止のため必要な措置その他の措置を執るものとする。

第百十六条  法務大臣は、第百十四条の規定による処理を終えたときは、速やかに、処理の結果(前条第一項の規定による法務大臣の措置を含む。)を救済の申出をした者に通知しなければならない。ただし、在所者による救済の申出(第百十条第一項各号に掲げる少年鑑別所の長の措置又は少年鑑別所の職員による行為に係る救済の申出を除く。)について、その在所者が退所したときは、この限りでない。

第百十七条  この款に定めるもののほか、救済の申出に関し必要な事項は、法務省令で定める。

     第二款 苦情の申出

第百十八条  在所者は、自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が受けた観護処遇又は鑑別について、口頭又は書面で、第五条の規定により実地監査を行う監査官(以下この条及び第百二十条第一項において単に「監査官」という。)に対し、苦情の申出をすることができる。
 第百十一条の規定は、前項の苦情の申出について準用する。
 監査官は、口頭による苦情の申出を受けるに当たっては、少年鑑別所の職員を立ち会わせてはならない。
 監査官は、苦情の申出を受けたときは、これを誠実に処理し、処理の結果を苦情の申出をした者に通知しなければならない。ただし、その者が退所したときは、この限りでない。

第百十九条  在所者は、自己に対する少年鑑別所の長の措置その他自己が受けた観護処遇又は鑑別について、口頭又は書面で、少年鑑別所の長に対し、苦情の申出をすることができる。
 第百十一条の規定は、前項の苦情の申出について準用する。
 在所者が口頭で第一項の苦情の申出をしようとするときは、少年鑑別所の長は、その指名する職員にその内容を聴取させることができる。
 前条第四項の規定は、少年鑑別所の長が苦情の申出を受けた場合について準用する。

     第三款 雑則

第百二十条  少年鑑別所の長は、在所者が、救済の申出をし、又は監査官に対し苦情の申出をするに当たり、その内容を少年鑑別所の職員(当該救済の申出に関する相談に応じた相談員を除く。)に秘密にすることができるように、必要な措置を講じなければならない。
 第九十三条(第九十九条において準用する場合を含む。)及び第百一条(第百四条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、救済の申出又は苦情の申出の書面は、検査をしてはならない。

第百二十一条  少年鑑別所の職員は、在所者が救済の申出又は苦情の申出をしたことを理由として、その者に対し不利益な取扱いをしてはならない。

第百二十二条  第百十二条及び前二条の規定は、在院中在所者が少年院法第百二十条 の規定により法務大臣に対して救済を求める申出をする場合について準用する。

    第十三節 仮収容

第百二十三条  在所者を同行する場合(第七十八条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)又は第七十九条第四項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定により連れ戻す場合を含む。)において、やむを得ない事由があるときは、最寄りの少年鑑別所若しくは少年院又は刑事施設の特に区別した場所にその者を仮に収容することができる。

    第十四節 退所

第百二十四条  被観護在所者の退所は、次に掲げる事由が生じた後直ちに行う。
 あらかじめ定められた収容の期間が満了したこと。
 少年法第十八条 、第二十三条第二項若しくは第二十四条第一項の決定又は更生保護法第七十一条 の申請に対する決定により観護の措置が効力を失ったこと(当該決定が審判期日において告知された場合に限る。)。
 家庭裁判所又は検察官その他のその者の身体の拘束について権限を有する者の退所の指揮又は通知を受けたこと。

第百二十五条  未決在所者の退所は、次に掲げる事由が生じた後直ちに行う。
 勾留されている被告人について、勾留の期間が満了したこと。
 刑事訴訟法第百六十七条第一項同法第二百二十四条第二項 において準ずる場合を含む。)の規定により留置されている者について、あらかじめ定められた留置の期間が満了したこと。
 刑事訴訟法第三百四十五条 の規定により勾留状が効力を失ったこと(同法 の規定により勾留されている未決在所者が公判廷にある場合に限る。)。
 検察官の退所の指揮又は通知を受けたこと。

第百二十六条  在院中在所者及び各種在所者の退所は、政令で定める事由が生じた後直ちに行う。

第百二十七条  少年鑑別所の長は、退所させるべき在所者が負傷又は疾病により重態であるとき、その他その者の利益のためにやむを得ない事由があるときは、その願い出により、その者が少年鑑別所に一時とどまることを許すことができる。
 前項の規定により少年鑑別所にとどまる者の観護処遇については、その性質に反しない限り、各種在所者に関する規定を準用する。

第百二十八条  退所する在所者に対しては、その帰住を助けるため必要な旅費又は衣類を支給するものとする。

    第十五節 死亡

第百二十九条  少年鑑別所の長は、在所者が死亡した場合には、法務省令で定めるところにより、その遺族等に対し、その死亡の原因及び日時並びに交付すべき遺留物又は発受禁止信書等があるときはその旨を速やかに通知しなければならない。

第百三十条  在所者が死亡した場合において、その死体の埋葬又は火葬を行う者がないときは、墓地、埋葬等に関する法律 (昭和二十三年法律第四十八号)第九条 の規定にかかわらず、その埋葬又は火葬は、少年鑑別所の長が行うものとする。
 前項に定めるもののほか、在所者の死体に関する措置については、法務省令で定める。

   第四章 非行及び犯罪の防止に関する援助

第百三十一条  少年鑑別所の長は、地域社会における非行及び犯罪の防止に寄与するため、非行及び犯罪に関する各般の問題について、少年、保護者その他の者からの相談のうち、専門的知識及び技術を必要とするものに応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うとともに、非行及び犯罪の防止に関する機関又は団体の求めに応じ、技術的助言その他の必要な援助を行うものとする。

   第五章 罰則

第百三十二条  第七十九条第二項の規定により解放された在所者(刑法 (明治四十年法律第四十五号)第九十七条 に規定する者に該当するものに限る。)が、第七十九条第三項の規定に違反して少年鑑別所又は指定された場所に出頭しないときは、一年以下の懲役に処する。

   附 則

(施行期日)
第一条  この法律は、少年院法の施行の日から施行する。ただし、第五条及び第百十八条の規定は、同法附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日から施行する。

(入所時の告知に関する特例)
第二条  第二十三条の規定は、この法律の施行の際現に少年鑑別所に収容されている在所者についても、適用する。この場合において、同条第一項中「その少年鑑別所への入所に際し」とあるのは、「この法律の施行後速やかに」とする。

(入所の通知に関する特例)
第三条  第二十五条の規定は、この法律の施行の際現に少年鑑別所に収容されている在所者(同条に規定する在所者に限る。)であって、その保護者その他相当と認める者に対し入所の通知がされていないものについても、適用する。この場合において、同条中「被観護在所者、未決在所者その他法務省令で定める在所者がその少年鑑別所に入所したときは、」とあるのは「この法律の施行後」と、「その旨」とあるのは「被観護在所者、未決在所者その他法務省令で定める在所者がその少年鑑別所に入所した旨」とする。

(金品の取扱いに関する経過措置)
第四条  この法律の施行の際現に少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十六年法律第六十号)第一条の規定による廃止前の少年院法(昭和二十三年法律第百六十九号。以下「旧少年院法」という。)第十七条第二項において準用する旧少年院法第九条の規定により領置されている在所者の金品については、第四十五条第二号に掲げる金品とみなして、第五十三条第一項の規定を適用する。

(連戻しに関する経過措置)
第五条  この法律の施行の日(次項及び附則第七条において「施行日」という。)前にされた旧少年院法第十七条第二項において準用する旧少年院法第十四条第三項の請求であって、この法律の施行の際まだその処理がされていないものについては、第七十八条第三項の請求とみなす。
 施行日前に旧少年院法第十七条第二項において準用する旧少年院法第十四条第三項の規定により発せられた連戻状であって、この法律の施行の際現にその効力を有するものについては、第七十八条第三項の規定により発せられた連戻状とみなす。

(発受を禁止した信書の取扱いに関する経過措置)
第六条  旧少年院法第十七条第二項において準用する旧少年院法第十五条第一項の規定に基づく法務省令の規定により発受を許されなかった在所者に係る信書であって、この法律の施行の際現に少年鑑別所の長が保管しているものについては、第九十七条第一項(第九十九条、第百三条及び第百四条において準用する場合を含む。)の規定により保管している信書とみなす。

(救済の申出に関する経過措置)
第七条  第百十条第一項の規定は、施行日前に退所した者については、適用しない。