株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法¶
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法(平成二十七年六月五日法律第三十五号)
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 設立(第八条―第十三条)
第三章 管理
第一節 取締役等(第十四条・第十五条)
第二節 海外通信・放送・郵便事業委員会(第十六条―第二十一条)
第三節 定款の変更(第二十二条)
第四章 業務
第一節 業務の範囲(第二十三条)
第二節 支援基準(第二十四条)
第三節 業務の実施(第二十五条―第二十七条)
第五章 国の援助等(第二十八条・第二十九条)
第六章 財務及び会計(第三十条―第三十三条)
第七章 監督(第三十四条―第三十六条)
第八章 解散等(第三十七条・第三十八条)
第九章 雑則(第三十九条)
第十章 罰則(第四十条―第四十六条)
附則
第一条
株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構は、我が国の事業者に蓄積された知識、技術及び経験を活用して海外において通信・放送・郵便事業を行う者等に対し資金供給その他の支援を行うことにより、我が国及び海外における通信・放送・郵便事業に共通する需要の拡大を通じ、当該需要に応ずる我が国の事業者の収益性の向上等を図り、もって我が国経済の持続的な成長に寄与することを目的とする株式会社とする。
第二条
この法律において「通信・放送・郵便事業」とは、次に掲げる事業をいう。
一
電気通信事業(電気通信設備を他人の通信の用に供する役務を他人の需要に応ずるために提供する事業をいう。)
二
放送事業(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信の役務を提供する事業をいう。)
三
郵便事業(信書その他の郵便物の送達の役務を他人の需要に応ずるために提供する事業をいう。)
四
前三号に掲げる事業が提供する役務の需要の開拓に寄与する事業その他の前三号に掲げる事業と密接に関連する事業であって、前三号に掲げる事業と事業上の損益の全部を共通にするもの
2
この法律において「対象事業」とは、海外において行われる通信・放送・郵便事業又は海外において行われる通信・放送・郵便事業を支援する事業をいう。
第四条
政府は、常時、機構が発行している株式(株主総会において決議することができる事項の全部について議決権を行使することができないものと定められた種類の株式を除く。以下この条において同じ。)の総数の二分の一以上に当たる数の株式を保有していなければならない。
第五条
機構は、会社法
(平成十七年法律第八十六号)第百九十九条第一項
に規定する募集株式(第四十五条第一号において「募集株式」という。)、同法第二百三十八条第一項
に規定する募集新株予約権(同号において「募集新株予約権」という。)若しくは同法第六百七十六条
に規定する募集社債(第三十五条及び同号において「募集社債」という。)を引き受ける者の募集をし、株式交換に際して株式、社債若しくは新株予約権を発行し、又は資金を借り入れようとするときは、総務大臣の認可を受けなければならない。
2
機構は、新株予約権の行使により株式を発行したときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
3
機構の借入金の現在額及び社債の元本に係る債務の現在額の合計額は、機構の資本金及び準備金の額の合計額に政令で定める倍数を乗じて得た額を超えることとなってはならない。
2
機構でない者は、その名称中に海外通信・放送・郵便事業支援機構という文字を用いてはならない。
第八条
機構の定款には、会社法第二十七条
各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一
機構の設立に際して発行する株式(以下「設立時発行株式」という。)の数(機構を種類株式発行会社として設立しようとする場合にあっては、その種類及び種類ごとの数)
二
設立時発行株式の払込金額(設立時発行株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。)
三
政府が割当てを受ける設立時発行株式の数(機構を種類株式発行会社として設立しようとする場合にあっては、その種類及び種類ごとの数)
四
会社法第百七条第一項第一号
に掲げる事項
五
取締役会及び監査役を置く旨
六
第二十三条第一項各号に掲げる業務の完了により解散する旨
第十条
総務大臣は、前条の規定による認可の申請があった場合においては、その申請が次に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。
一
設立の手続及び定款の内容が法令の規定に適合するものであること。
二
定款に虚偽の記載若しくは記録又は虚偽の署名若しくは記名押印(会社法第二十六条第二項
の規定による署名又は記名押印に代わる措置を含む。)がないこと。
三
業務の運営が健全に行われ、対象事業の推進に寄与することが確実であると認められること。
2
総務大臣は、前項の規定により審査した結果、その申請が同項各号に掲げる基準に適合していると認めるときは、設立の認可をしなければならない。
第十二条
会社法第三十条第二項
、第三十四条第一項、第五十九条第一項第一号及び第九百六十三条第一項の規定の適用については、同法第三十条第二項
中「前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前」とあるのは「株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法(平成二十七年法律第三十五号)第十条第二項の認可の後株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構の成立前は、定款」と、同法第三十四条第一項中「設立時発行株式の引受け」とあるのは「株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法第十条第二項の認可の」と、同号中「定款の認証の年月日及びその認証をした公証人の氏名」とあるのは「株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法第十条第二項の認可の年月日」と、同法第九百六十三条第一項中「第三十四条第一項」とあるのは「第三十四条第一項(株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法第十二条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」とする。
2
委員会は、前項第一号及び第二号に掲げる決定について、取締役会から委任を受けたものとみなす。
2
委員の中には、代表取締役及び社外取締役が、それぞれ一人以上含まれなければならない。
3
委員は、取締役会の決議により定める。
4
委員の選定及び解職の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
5
委員は、それぞれ独立してその職務を執行する。
6
委員会に委員長を置き、委員の互選によってこれを定める。
7
委員長は、委員会の会務を総理する。
8
委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長の職務を代理する者を定めておかなければならない。
2
委員会は、委員長が出席し、かつ、現に在任する委員の総数の三分の二以上の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3
委員会の議事は、出席した委員の過半数をもって決する。可否同数のときは、委員長が決する。
4
前項の規定による決議について特別の利害関係を有する委員は、議決に加わることができない。
5
前項の規定により議決に加わることができない委員の数は、第二項に規定する現に在任する委員の数に算入しない。
6
監査役は、委員会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
7
委員会の委員であって委員会によって選定された者は、第三項の規定による決議後、遅滞なく、当該決議の内容を取締役会に報告しなければならない。
8
委員会の議事については、総務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した委員及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
9
前項の議事録が電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、総務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
10
前各項及び次条に定めるもののほか、議事の手続その他委員会の運営に関し必要な事項は、委員会が定める。
2
株主は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、次に掲げる請求をすることができる。
一
前項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二
前項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を総務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3
債権者は、委員の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第一項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
4
裁判所は、第二項各号に掲げる請求又は前項の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、機構に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第二項又は前項の許可をすることができない。
5
会社法第八百六十八条第一項
、第八百六十九条、第八百七十条第二項(第一号に係る部分に限る。)、第八百七十条の二、第八百七十一条本文、第八百七十二条(第五号に係る部分に限る。)、第八百七十二条の二、第八百七十三条本文、第八百七十五条及び第八百七十六条の規定は、第二項及び第三項の許可について準用する。
6
取締役は、第一項の議事録について第二項各号に掲げる請求をすることができる。
2
前項の規定による委員の選定の登記の申請書には、委員の選定及びその選定された委員が就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない。
3
委員の退任による変更の登記の申請書には、これを証する書面を添付しなければならない。
4
機構は、委員に選定された取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨を登記しなければならない。
第二十二条
機構の定款の変更の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
第二十三条
機構は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。
一
対象事業者(第二十五条第一項の規定により支援の対象となった事業者(民法
(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項
に規定する組合契約によって成立する組合、商法
(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条
に規定する匿名組合契約によって成立する匿名組合、投資事業有限責任組合契約に関する法律
(平成十年法律第九十号)第二条第二項
に規定する投資事業有限責任組合若しくは有限責任事業組合契約に関する法律
(平成十七年法律第四十号)第二条
に規定する有限責任事業組合又は外国の法令に基づいて設立された団体であってこれらの組合に類似するものを含む。以下同じ。)をいう。以下同じ。)に対する出資
三
対象事業者に対する資金の貸付け
四
対象事業者が発行する有価証券(金融商品取引法
(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項
各号に掲げる有価証券及び同条第二項
の規定により有価証券とみなされる権利をいう。以下この号及び第十二号において同じ。)及び対象事業者が保有する有価証券の取得
五
対象事業者に対する金銭債権及び対象事業者が保有する金銭債権の取得
六
対象事業者の発行する社債及び資金の借入れに係る債務の保証
八
対象事業を行い、又は行おうとする事業者に対する技術者その他の専門家の派遣
九
対象事業を行い、又は行おうとする事業者に対する助言
十
対象事業を行い、又は行おうとする事業者に対する知的財産権(知的財産基本法
(平成十四年法律第百二十二号)第二条第二項
に規定する知的財産権及び外国におけるこれに相当するものをいう。次号において同じ。)の移転、設定若しくは許諾又は営業秘密(不正競争防止法
(平成五年法律第四十七号)第二条第六項
に規定する営業秘密及び外国におけるこれに相当するものをいう。次号において同じ。)の開示
十一
前号に掲げる業務のために必要な知的財産権の取得をし、若しくは移転、設定若しくは許諾を受け、又は営業秘密の開示を受けること。
十二
保有する株式、新株予約権、持分又は有価証券(第二十七条第一項及び第二項において「株式等」という。)の譲渡その他の処分
十三
債権の管理及び譲渡その他の処分
十四
前各号に掲げる業務に関連して必要な交渉及び調査
十五
対象事業を推進するために必要な調査及び情報の提供
十六
前各号に掲げる業務に附帯する業務
十七
前各号に掲げるもののほか、機構の目的を達成するために必要な業務
2
機構は、前項第十七号に掲げる業務を営もうとするときは、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。
第二十四条
総務大臣は、機構が対象事業の支援(前条第一項第一号から第七号までに掲げる業務によりされるものに限る。以下「対象事業支援」という。)の対象となる事業者及び当該対象事業支援の内容を決定するに当たって従うべき基準(以下この条及び次条第一項において「支援基準」という。)を定めるものとする。
2
総務大臣は、前項の規定により支援基準を定めようとするときは、あらかじめ、外務大臣、財務大臣及び経済産業大臣に協議しなければならない。
3
総務大臣は、第一項の規定により支援基準を定めたときは、これを公表するものとする。
2
機構は、対象事業支援をするかどうかを決定しようとするときは、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。
3
総務大臣は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、外務大臣、財務大臣及び経済産業大臣に協議しなければならない。
第二十六条
機構は、次に掲げる場合には、速やかに、前条第一項の規定による決定(次項において「支援決定」という。)を撤回しなければならない。
一
対象事業者が対象事業を行わないとき。
二
対象事業者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定、特別清算開始の命令又は外国倒産処理手続の承認の決定を受けたとき。
2
機構は、前項の規定により支援決定を撤回したときは、直ちに、対象事業者に対し、その旨を通知しなければならない。
2
機構は、経済情勢、対象事業者の事業の状況等を考慮しつつ、平成四十八年三月三十一日までに、保有する全ての株式等及び債権の譲渡その他の処分を行うよう努めなければならない。
3
機構が債務の保証を行う場合におけるその対象となる貸付金の償還期限は、平成四十八年三月三十一日まででなければならない。
2
前項に定めるもののほか、総務大臣及び国の行政機関の長は、機構及び対象事業者の行う事業の円滑かつ確実な実施が促進されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
2
前項の予算には、その事業年度の事業計画及び資金計画に関する書類を添付しなければならない。
第三十三条
政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律
(昭和二十一年法律第二十四号)第三条
の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の第五条第一項の社債又は借入れに係る債務について、保証契約をすることができる。
2
総務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
第三十五条
総務大臣は、第五条第一項(募集社債を引き受ける者の募集をし、株式交換に際して社債を発行し、又は資金を借り入れようとするときに限る。)、第十条第二項、第二十二条、第二十三条第二項、第三十条第一項、第三十一条又は第三十八条の認可をしようとするときは、財務大臣に協議しなければならない。
2
総務大臣は、前項の評価を行ったときは、遅滞なく、機構に対し、当該評価の結果を通知するとともに、これを公表しなければならない。
第三十九条
総務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構からその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、機構の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2
前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第四十条
機構の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員が、その職務に関して、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによって不正の行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、五年以下の懲役に処する。
2
前項の場合において、犯人が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第四十一条
前条第一項の賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2
前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第四十二条
第四十条第一項の罪は、日本国外において同項の罪を犯した者にも適用する。
第四十三条
機構の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役若しくは職員又はこれらの職にあった者が、第十五条の規定に違反してその職務上知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第四十四条
第三十九条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした機構の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員は、五十万円以下の罰金に処する。
第四十五条
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした機構の取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員又は監査役は、百万円以下の過料に処する。
一
第五条第一項の規定に違反して、募集株式、募集新株予約権若しくは募集社債を引き受ける者の募集をし、株式交換に際して株式、社債若しくは新株予約権を発行し、又は資金を借り入れたとき。
二
第五条第二項の規定に違反して、株式を発行した旨の届出を行わなかったとき。
三
第二十一条第一項又は第四項の規定に違反して、登記することを怠ったとき。
四
第二十三条第二項の規定に違反して、業務を行ったとき。
五
第二十五条第二項又は第二十七条第一項の規定に違反して、決定を行ったとき。
六
第三十条第一項の規定に違反して、予算の認可を受けなかったとき。
七
第三十二条の規定に違反して、貸借対照表、損益計算書若しくは事業報告書を提出せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたこれらのものを提出したとき。
八
第三十四条第二項の規定による命令に違反したとき。
第四十六条
第七条第二項の規定に違反して、その名称中に海外通信・放送・郵便事業支援機構という文字を用いた者は、十万円以下の過料に処する。
附 則 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条
この法律の施行の際現にその名称中に海外通信・放送・郵便事業支援機構という文字を使用している者については、第七条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第三条
機構の成立の日の属する事業年度の機構の予算については、第三十条第一項中「毎事業年度の開始前に」とあるのは、「その成立後遅滞なく」とする。
(検討)
第四条
政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。