琵琶湖の保全及び再生に関する法律¶
琵琶湖の保全及び再生に関する法律(平成二十七年九月二十八日法律第七十五号)
第一条
この法律は、琵琶湖が、我が国最大の湖であり、近畿圏において治水上又は利水上重要な役割を担っているのみならず、多数の固有種が存在する等豊かな生態系を有し、貴重な自然環境及び水産資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであるにもかかわらず、その総合的な保全及び再生を図ることが困難な状況にあること並びに琵琶湖の保全及び再生が我が国における湖沼の保全及び再生の先駆けとしての事例となり得ることに鑑み、琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針を定めるとともに、琵琶湖の保全及び再生に関し実施すべき施策に関する計画を策定し、その実施を推進する等の措置を講ずることにより、国民的資産である琵琶湖を健全で恵み豊かな湖として保全及び再生を図り、もって近畿圏における住民の健康な生活環境の保持と近畿圏の健全な発展に寄与し、あわせて湖沼がもたらす恵沢を将来にわたって享受できる自然と共生する社会の実現に資することを目的とする。
第二条
主務大臣は、琵琶湖の保全及び再生に関し実施すべき施策(以下「琵琶湖保全再生施策」という。)を推進するため、琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針(以下単に「基本方針」という。)を定めなければならない。
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基本方針は、琵琶湖の特性及び琵琶湖をめぐる状況の変化を踏まえつつ、関係地方公共団体が多様な主体の参加と協力を得て策定し、及び実施する琵琶湖保全再生施策について国が必要な支援を行うことを旨として、長期的な観点から総合的かつ効果的に琵琶湖保全再生施策の推進を図ることを基本理念として定めるものとする。
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主務大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、関係府県の意見を聴くとともに、関係行政機関の長に協議しなければならない。
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主務大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
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前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
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琵琶湖保全再生計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一
計画期間
二
琵琶湖の保全及び再生に関する方針
三
琵琶湖の保全及び再生のための次に掲げる事項
イ 水質の汚濁の防止及び改善に関する事項
ロ 水源の涵養に関する事項
ハ 生態系の保全及び再生に関する事項
ニ 景観の整備及び保全に関する事項
ホ 農林水産業、観光、交通その他の産業の振興に関する事項
四
琵琶湖保全再生施策の実施に資する調査研究に関する事項
五
琵琶湖保全再生施策に取り組む主体その他琵琶湖保全再生施策の推進体制の整備に関する次に掲げる事項
イ 住民、事業者、特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法
(平成十年法律第七号)第二条第二項
に規定する特定非営利活動法人をいう。第二十二条において同じ。)等の多様な主体による協働の推進に関する事項
ロ 琵琶湖保全再生施策の推進体制に関する事項
六
琵琶湖保全再生施策の実施に資する体験学習を通じた教育その他の教育の充実に関する事項
七
その他琵琶湖の保全及び再生に関し必要な事項
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琵琶湖保全再生計画は、国土形成計画法
(昭和二十五年法律第二百五号)第二条第一項
に規定する国土形成計画、近畿圏整備法
(昭和三十八年法律第百二十九号)第二条第二項
に規定する近畿圏整備計画、湖沼水質保全特別措置法
(昭和五十九年法律第六十一号)第四条第一項
に規定する湖沼水質保全計画その他の法律の規定による計画であって琵琶湖に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
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滋賀県は、琵琶湖保全再生計画を定めようとするときは、あらかじめ、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、関係地方公共団体の意見を聴き、及び主務大臣に協議しなければならない。
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滋賀県は、琵琶湖保全再生計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係地方公共団体に通知しなければならない。
6
前二項の規定は、琵琶湖保全再生計画の変更について準用する。
第五条
関係地方公共団体が琵琶湖保全再生計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政事情が許す限り、特別の配慮をするものとする。
第八条
主務大臣、関係行政機関の長、関係府県知事及び関係指定都市(地方自治法
(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項
の指定都市をいう。以下同じ。)の長(以下この項において「主務大臣等」という。)は、琵琶湖保全再生施策の推進に関し必要な事項について協議を行うため、琵琶湖保全再生推進協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。この場合において、主務大臣等は、必要があると認めるときは、協議会に、関係市町村その他主務大臣等が必要と認める者を加えることができる。
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前項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
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関係地方公共団体は、国との連携を図りつつ、前項の調査を行うとともに、その結果を公表するよう努めるものとする。
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国及び関係地方公共団体は、前二項の調査の結果を踏まえ、水質の汚濁の防止及び改善、生態系の保全及び再生等の琵琶湖の自然環境の保全及び再生に関する研究開発の推進並びにその成果の普及等の措置を講ずるよう努めるものとする。
第十条
国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の水質の保全及び改善が近畿圏における住民の生活及び事業活動にとって極めて重要であることに鑑み、水質の汚濁の防止のために必要な規制等の措置を講ずるとともに、下水道、浄化槽、農業集落排水施設、農業用用排水施設等の整備及び管理その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第十二条
国及び関係地方公共団体は、琵琶湖における水環境(水象、水質、水底の底質その他の水に係る環境をいう。)の改善並びに生態系の保全及び再生を図るため、ヨシ群落その他の在来植物(琵琶湖にその本来の生息地を有する植物をいう。)の群落、内湖(琵琶湖と水路によってつながっている琵琶湖特有の湖沼をいう。)、砂浜、自然の湖岸等の湖辺の自然環境の保全及び再生のため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第十三条
国は、琵琶湖におけるオオクチバスその他の海外から我が国に導入された動物及びオオバナミズキンバイその他の海外から我が国に導入された植物(次項において「外来動植物」という。)による生態系及び漁業に係る被害の状況に鑑み、その被害を防止するため、これらの捕獲等の防除が適確に行われるよう必要な支援をするものとする。
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関係地方公共団体は、琵琶湖において生態系又は漁業に被害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある外来動植物の防除を行うよう努めるとともに、その被害の防止に関する啓発活動その他その被害の防止に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第十四条
国は、琵琶湖におけるカワウによる著しい漁業及び植生に係る被害の状況に鑑み、その被害を防止するため、広域的な連携のための協議会を設置するとともに、カワウの防除措置等の有効な実施に関する技術的な助言、情報の提供その他必要な支援をするものとする。
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国及び関係地方公共団体は、琵琶湖におけるカワウによる被害の防止及びその被害に係る自然環境の回復のため、カワウの防除措置及び捕獲等による個体数の管理、森林の整備及び保全その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第十五条
国及び関係地方公共団体は、琵琶湖における湖底の底質の保全及び改善、悪臭の防止等による生活環境の改善、漁業環境の改善並びに船舶の航行の安全の確保のため、水草の除去、湖岸に漂着したごみ等の処理、湖底の耕うん、湖底における砂地の造成、湖底の底質の保全及び改善等に資する水産動物の種苗の放流その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第十六条
国及び関係地方公共団体は、琵琶湖における水産資源を回復し、その漁業の振興を図るため、水産動物の種苗の放流、漁場の整備及び保全、琵琶湖に流入し又は琵琶湖から流出する河川等における魚道の整備及び適切な維持管理等の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第十九条
国及び関係地方公共団体は、琵琶湖への関心を高めるとともに、琵琶湖周辺の環境負荷の軽減、災害時における旅客又は貨物の輸送の確保等を図るため、湖上交通の活性化のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第二十条
国及び関係地方公共団体は、琵琶湖が歴史的な景勝地として国民の貴重な財産であることに鑑み、現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう、その景観の整備及び保全のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第二十一条
国及び関係地方公共団体は、農業体験、魚を学ぶ体験学習、自然観察会その他の自然を観察する機会の充実、エコツーリズムの推進等を通じて、国民に対する琵琶湖の自然環境に関する教育を充実させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
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国及び関係地方公共団体は、琵琶湖の保全及び再生の重要性についての国民の理解と関心を深めるよう、前項の措置のほか、琵琶湖の保全及び再生に関する広報活動その他の普及啓発、琵琶湖の環境の保全及び再生に関する教育及び学習の振興、琵琶湖の特性を生かした観光の振興その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第二十二条
国及び関係地方公共団体は、個人、事業者、特定非営利活動法人等の多様な主体が協働して琵琶湖保全再生施策に取り組むことを促進するため、これらの者が琵琶湖保全再生施策に参画することができる機会の提供、これらの者の間の交流の促進その他必要な措置を積極的に講ずるものとする。
附 則
(施行期日)
1
この法律は、公布の日から施行する。
(見直し)
2
この法律については、この法律の施行の日から五年以内に、この法律の施行の状況を踏まえ、必要な見直しを行うものとする。