刑事補償法¶
刑事補償法(昭和二十五年一月一日法律第一号)
最終改正:平成一九年六月一五日法律第八八号
第一条
刑事訴訟法
(昭和二十三年法律第百三十一号)による通常手続又は再審若しくは非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が同法
、少年法
(昭和二十三年法律第百六十八号)又は経済調査庁法(昭和二十三年法律第二百六号)によつて未決の抑留又は拘禁を受けた場合には、その者は、国に対して、抑留又は拘禁による補償を請求することができる。
2
上訴権回復による上訴、再審又は非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が原判決によつてすでに刑の執行を受け、又は刑法
(明治四十年法律第四十五号)第十一条第二項
の規定による拘置を受けた場合には、その者は、国に対して、刑の執行又は拘置による補償を請求することができる。
3
刑事訴訟法第四百八十四条
から第四百八十六条
まで(同法第五百五条
において準用する場合を含む。)の収容状による抑留及び同法第四百八十一条第二項
(同法第五百五条
において準用する場合を含む。)の規定による留置並びに更生保護法
(平成十九年法律第八十八号)第六十三条第二項
又は第三項
の引致状による抑留及び留置は、前項の規定の適用については、刑の執行又は拘置とみなす。
2
死亡した者について再審又は非常上告の手続において無罪の裁判があつた場合には、補償の請求については、死亡の時に無罪の裁判があつたものとみなす。
第三条
左の場合には、裁判所の健全な裁量により、補償の一部又は全部をしないことができる。
一
本人が、捜査又は審判を誤まらせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有罪の証拠を作為することにより、起訴、未決の抑留若しくは拘禁又は有罪の裁判を受けるに至つたものと認められる場合
二
一個の裁判によつて併合罪の一部について無罪の裁判を受けても、他の部分について有罪の裁判を受けた場合
第四条
抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第二項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。懲役、禁錮若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。
2
裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであつた利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。
3
死刑の執行による補償においては、三千万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。ただし、本人の死亡によつて生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に三千万円を加算した額の範囲内とする。
4
裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、同項但書の証明された損失額の外、本人の年齢、健康状態、収入能力その他の事情を考慮しなければならない。
5
罰金又は科料の執行による補償においては、すでに徴収した罰金又は科料の額に、これに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ年五分の割合による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。労役場留置の執行をしたときは、第一項の規定を準用する。
6
没収の執行による補償においては、没収物がまだ処分されていないときは、その物を返付し、すでに処分されているときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付し、又、徴収した追徴金についてはその額にこれに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ年五分の割合による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。
第五条
この法律は、補償を受けるべき者が国家賠償法
(昭和二十二年法律第百二十五号)その他の法律の定めるところにより損害賠償を請求することを妨げない。
2
補償を受けるべき者が同一の原因について他の法律によつて損害賠償を受けた場合において、その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額に等しいか、又はこれを越える場合には、補償をしない。その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額より少いときは、損害賠償の額を差し引いて補償金の額を定めなければならない。
3
他の法律によつて損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によつて補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならない。
2
前項の場合には、請求をした者以外の相続人は、共同請求人として手続に参加することができる。
第十五条
補償請求の手続が法令上の方式に違反し、補正することができないとき、若しくは請求人が裁判所から補正を命ぜられてこれに応じないとき、又は補償の請求が第七条の期間の経過後にされたときは、請求を却下する決定をしなければならない。
第十八条
補償の請求をした者が請求の手続中死亡し、又は相続人たる身分を失つた場合において、他に請求人がないときは、請求の手続は、中断する。この場合において、請求をした者の相続人及び請求をした者と同順位の相続人は、二箇月以内に請求の手続を受け継ぐことができる。
2
裁判所は、前項の規定により手続を受け継ぐことのできる者で裁判所に知れているものに対しては、同項の期間内に請求の手続を受け継ぐことができる旨を通知しなければならない。
3
第一項の期間内に手続を受け継ぐ旨の申立がないときは、裁判所は、決定で請求を却下しなければならない。
2
前項の即時抗告及び異議の申立についての決定に対しては、刑事訴訟法第四百五条
各号に定める事由があるときは、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
3
第九条から第十五条まで、第十七条及び前条の規定は、前二項の場合に準用する。
2
補償の払渡を受けることのできる者が数人ある場合には、その一人のした補償払渡の請求は、補償の決定を受けた者全員のためその全部につきしたものとみなす。
3
第十一条の規定は、裁判所が補償払渡の請求を受けた場合に準用する。
第二十三条
この法律の決定、即時抗告、異議の申立及び第十九条第二項の抗告については、この法律に特別の定のある場合を除いては、刑事訴訟法
を準用する。期間についても、同様である。
2
前項の申立は、補償の決定が確定した後二箇月以内にしなければならない。
3
第一項の公示があつたときは、さらに同項の申立をすることはできない。
4
前三項の規定は、第五条第二項前段に規定する理由による補償の請求を棄却する決定が確定した場合に準用する。
第二十五条
刑事訴訟法
の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けた者は、もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかつたならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して、抑留若しくは拘禁による補償又は刑の執行若しくは拘置による補償を請求することができる。
2
前項の規定による補償については、無罪の裁判を受けた者の補償に関する規定を準用する。補償決定の公示についても同様である。
第二十六条
日本国が外国に対し逃亡犯罪人の引渡を請求した場合において、当該外国がその引渡のためにした抑留又は拘禁は、刑事訴訟法
による抑留又は拘禁とみなす。
第二十七条
国際受刑者移送法
(平成十四年法律第六十六号)第二条第六号
の送出移送をした場合において、同条第八号
の執行国が同条第十二号
の送出移送犯罪に係る懲役又は禁錮の確定裁判の執行の共助としてした拘禁は、日本国による刑の執行とみなす。
第二十八条
国際捜査共助等に関する法律
(昭和五十五年法律第六十九号)第十九条
の国内受刑者に係る受刑者証人移送をした場合において、当該国内受刑者が受刑者証人移送として移送されていた期間における身体の拘束は、日本国による刑の執行とみなす。
附 則
1
この法律は、公布の日から施行する。但し、昭和二十五年三月三十一日以前に補償の決定又は第五条第二項前段に規定する理由による補償の請求を棄却する決定が確定した事件については、第二十四条の公示は、同条の規定にかかわらず、官報だけで行うものとする。
2
刑事補償法(昭和六年法律第六十号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
3
この法律中無罪の裁判を受けたことを理由とする補償の請求に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、この法律施行前に生じた事項にも適用する。但し、旧法の規定によつて生じた効力を妨げない。
4
日本国憲法施行後この法律施行前に無罪の裁判を受けた者に係る補償については、この法律施行後一年以内に、この法律の規定により補償の請求をすることができる。
5
この法律施行前補償の決定があつた事項について前項の規定による補償の請求があつた場合には、裁判所は、前にした補償の決定による補償金の額を差し引いて補償金の額を定めなければならない。
6
旧法の規定により補償をした旨が官報に掲載されたときは、第四項の請求に対し補償の決定又は第五条第二項前段に規定する理由による補償の請求を棄却する決定があつた場合でも、第二十四条の規定による申立をすることはできない。
7
前四項の規定の適用については、旧刑事訴訟法(大正十一年法律第七十五号)又は日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第七十六号。以下「応急措置法」という。)の規定による事項で、刑事訴訟法にその規定に相当する規定のあるものは、刑事訴訟法の規定による事項とみなす。
8
応急措置法第十七条の上告において無罪の言渡を受けた者が原判決によつてすでに刑の執行を受け、又は刑法第十一条第二項の規定による拘置を受けた場合には、その刑の執行及び拘置は、この法律の適用については、第一条第二項の規定による刑の執行又は拘置とみなす。
9
刑事訴訟法施行法(昭和二十三年法律第二百四十九号)第二条の規定により旧刑事訴訟法及び応急措置法による場合において、これらの法律の規定による事項で刑事訴訟法にその規定に相当する規定のあるものは、この法律の適用については、刑事訴訟法の規定による事項とみなす。
附 則 (昭和二七年六月二三日法律第二〇八号) 抄
1
この法律は、公布の日から施行する。
4
この法律による改正前の第四十五条の引致状による抑留及び留置は、刑事補償法の適用については、改正後の第四十一条の引致状による抑留及び留置とみなす。
附 則 (昭和二八年七月二一日法律第六八号) 抄
1
この法律は、昭和二十八年七月二十二日から施行する。
附 則 (昭和二九年四月一日法律第五八号) 抄
1
この法律は、刑法の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第五十七号)の施行の日から施行する。
附 則 (昭和三九年四月二七日法律第七一号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (昭和三九年五月二九日法律第八六号) 抄
(施行期日)
1
この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (昭和四三年五月三〇日法律第七五号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (昭和四八年六月二二日法律第三七号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (昭和五〇年一二月二〇日法律第八七号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (昭和五三年四月二五日法律第二八号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (昭和五五年五月七日法律第四二号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (昭和五七年八月一〇日法律第七六号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (昭和六三年五月一七日法律第四二号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (平成四年六月二六日法律第八三号)
1
この法律は、公布の日から施行する。
2
この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。
附 則 (平成一四年六月一二日法律第六六号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。
附 則 (平成一六年六月九日法律第八九号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、第一条中国際捜査共助法に第三章及び第四章を加える改正規定並びに附則第三条及び第五条の規定は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
附 則 (平成一七年五月二五日法律第五〇号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
第四十一条
政府は、施行日から五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
附 則 (平成一九年六月一五日法律第八八号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。