逃亡犯罪人引渡法

逃亡犯罪人引渡法
(昭和二十八年七月二十一日法律第六十八号)


最終改正:平成一九年五月一一日法律第三七号

第一条  この法律において「引渡条約」とは、日本国と外国との間に締結された犯罪人の引渡しに関する条約をいう。
 この法律において「請求国」とは、日本国に対して犯罪人の引渡しを請求した外国をいう。
 この法律において「引渡犯罪」とは、請求国からの犯罪人の引渡しの請求において当該犯罪人が犯したとする犯罪をいう。
 この法律において「逃亡犯罪人」とは、引渡犯罪について請求国の刑事に関する手続が行なわれた者をいう。

第二条  左の各号の一に該当する場合には、逃亡犯罪人を引き渡してはならない。但し、第三号、第四号、第八号又は第九号に該当する場合において、引渡条約に別段の定があるときは、この限りでない。
 引渡犯罪が政治犯罪であるとき。
 引渡の請求が、逃亡犯罪人の犯した政治犯罪について審判し、又は刑罰を執行する目的でなされたものと認められるとき。
 引渡犯罪が請求国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の拘禁刑にあたるものでないとき。
 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行なわれたとした場合において、当該行為が日本国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に処すべき罪にあたるものでないとき。
 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行われ、又は引渡犯罪に係る裁判が日本国の裁判所において行われたとした場合において、日本国の法令により逃亡犯罪人に刑罰を科し、又はこれを執行することができないと認められるとき。
 引渡犯罪について請求国の有罪の裁判がある場合を除き、逃亡犯罪人がその引渡犯罪に係る行為を行つたことを疑うに足りる相当な理由がないとき。
 引渡犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。
 逃亡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について逃亡犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終らず、若しくは執行を受けないこととなつていないとき。
 逃亡犯罪人が日本国民であるとき。

第三条  外務大臣は、逃亡犯罪人の引渡しの請求があつたときは、次の各号の一に該当する場合を除き、引渡請求書又は外務大臣の作成した引渡しの請求があつたことを証明する書面に関係書類を添附し、これを法務大臣に送付しなければならない。
 請求が引渡条約に基づいて行なわれたものである場合において、その方式が引渡条約に適合しないと認めるとき。
 請求が引渡条約に基づかないで行なわれたものである場合において、請求国から日本国が行なう同種の請求に応ずべき旨の保証がなされないとき。

第四条  法務大臣は、外務大臣から前条の規定による引渡しの請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号の一に該当する場合を除き、東京高等検察庁検事長に対し関係書類を送付して、逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて東京高等裁判所に審査の請求をなすべき旨を命じなければならない。
 明らかに逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当すると認めるとき。
 第二条第八号又は第九号に該当する場合には逃亡犯罪人を引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引渡条約の定めがある場合において、明らかに同条第八号又は第九号に該当し、かつ、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。
 前号に定める場合のほか、逃亡犯罪人を引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引渡条約の定めがある場合において、当該定めに該当し、かつ、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。
 引渡しの請求が引渡条約に基づかないで行われたものである場合において、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。
 法務大臣は、前項第三号又は第四号の認定をしようとするときは、あらかじめ外務大臣と協議しなければならない。
 法務大臣は、第一項の規定による命令その他逃亡犯罪人の引渡しに関する措置をとるため必要があると認めるときは、逃亡犯罪人の所在その他必要な事項について調査を行うことができる。

第五条  東京高等検察庁検事長は、前条第一項の規定による法務大臣の命令を受けたときは、逃亡犯罪人が仮拘禁許可状により拘禁され、又は仮拘禁許可状による拘禁を停止されている場合を除き、東京高等検察庁の検察官をして、東京高等裁判所の裁判官のあらかじめ発する拘禁許可状により、逃亡犯罪人を拘禁させなければならない。但し、逃亡犯罪人が定まつた住居を有する場合であつて、東京高等検察庁検事長において逃亡犯罪人が逃亡するおそれがないと認めるときは、この限りでない。
 前項の拘禁許可状は、東京高等検察庁の検察官の請求により発する。
 拘禁許可状には、逃亡犯罪人の氏名、引渡犯罪名、請求国の名称、有効期間及びその期間経過後は拘束に着手することができず拘禁許可状は返還しなければならない旨並びに発付の年月日を記載し、裁判官が記名押印しなければならない。

第六条  東京高等検察庁の検察官は、検察事務官、警察官、海上保安官又は海上保安官補(以下「検察事務官等」という。)に前条の拘禁許可状による拘束をさせることができる。
 拘禁許可状により逃亡犯罪人を拘束するには、これを逃亡犯罪人に示さなければならない。
 検察事務官等は、拘禁許可状により逃亡犯罪人を拘束したときは、できる限りすみやかに、これを東京高等検察庁の検察官に引致しなければならない。
 刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)第七十一条 、第七十三条第三項、第七十四条及び第百二十六条の規定は、拘禁許可状による拘束について準用する。

第七条  東京高等検察庁の検察官は、拘禁許可状により逃亡犯罪人を拘束したとき、又は拘禁許可状により拘束された逃亡犯罪人を受け取つたときは、直ちに、その人違でないかどうかを取り調べなければならない。
 逃亡犯罪人が人違いでないときは、直ちに、拘束の事由を告げた上、拘禁すべき刑事施設を指定し、速やかに、かつ、直接、逃亡犯罪人をその刑事施設に送致しなければならない。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

第八条  東京高等検察庁の検察官は、第四条第一項の規定による法務大臣の命令があつたときは、逃亡犯罪人の現在地が判らない場合を除き、すみやかに、東京高等裁判所に対し、逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。拘禁許可状により逃亡犯罪人を拘束し、又は拘禁許可状により拘束された逃亡犯罪人を受け取つたときは、拘束した時又は受け取つた時から二十四時間以内に審査の請求をしなければならない。
 前項の審査の請求は書面で行い、これに関係書類を添附しなければならない。
 東京高等検察庁の検察官は、第一項の請求をしたときは、逃亡犯罪人に前項の請求書の謄本を送付しなければならない。

第九条  東京高等裁判所は、前条の審査の請求を受けたときは、すみやかに、審査を開始し、決定をするものとする。逃亡犯罪人が拘禁許可状により拘禁されているときは、おそくとも、拘束を受けた日から二箇月以内に決定をするものとする。
 逃亡犯罪人は、前項の審査に関し、弁護士の補佐を受けることができる。
 東京高等裁判所は、第一項の決定をする前に、逃亡犯罪人及びこれを補佐する弁護士に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。但し、次条第一項第一号又は第二号の決定をする場合は、この限りでない。
 東京高等裁判所は、第一項の審査をするについて必要があるときは、証人を尋問し、又は鑑定、通訳若しくは翻訳を命ずることができる。この場合においては、その性質に反しない限り、刑事訴訟法第一編第十一章 から第十三章 まで及び刑事訴訟費用に関する法令の規定を準用する。

第十条  東京高等裁判所は、前条第一項の規定による審査の結果に基いて、左の区別に従い、決定をしなければならない。
 審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定
 逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当するときは、その旨の決定
 逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するときは、その旨の決定
 前項の決定は、その主文を東京高等検察庁の検察官に通知することによつて、その効力を生ずる。
 東京高等裁判所は、第一項の決定をしたときは、すみやかに、東京高等検察庁の検察官及び逃亡犯罪人に裁判書の謄本を送達し、東京高等検察庁の検察官にその提出した関係書類を返還しなければならない。

第十一条  外務大臣は、第三条の規定による書面の送付をした後に、請求国から逃亡犯罪人の引渡しの請求を撤回する旨の通知を受け、又は第三条第二号に該当するに至つたときは、直ちに、その旨を法務大臣に通知しなければならない。
 法務大臣は、第四条第一項の命令をした後に、外務大臣から前項の規定による通知を受け、又は第四条第一項各号の一に該当するに至つたときは、直ちに、その命令を取り消すとともに、第八条第三項の規定による審査請求書の謄本の送付を受けた逃亡犯罪人にその旨を通知しなければならない。
 東京高等検察庁の検察官は、審査の請求をした後に審査請求命令が取り消されたときは、すみやかに、審査の請求を取り消さなければならない。

第十二条  東京高等検察庁の検察官は、第十条第一項第一号若しくは第二号の決定があつたとき、又は前条の規定により審査請求命令が取り消されたときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている逃亡犯罪人を釈放しなければならない。

第十三条  東京高等検察庁検事長は、第十条第三項の規定により、裁判書の謄本が東京高等検察庁の検察官に送達されたときは、すみやかに、意見を附し、関係書類とともに、これを法務大臣に提出しなければならない。

第十四条  法務大臣は、第十条第一項第三号の決定があつた場合において、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当であると認めるときは、東京高等検察庁検事長に対し逃亡犯罪人の引渡を命ずるとともに、逃亡犯罪人にその旨を通知し、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるときは、直ちに、東京高等検察庁検事長及び逃亡犯罪人にその旨を通知するとともに、東京高等検察庁検事長に対し拘禁許可状により拘禁されている逃亡犯罪人の釈放を命じなければならない。
 東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による釈放の命令があつたとき、又は第十条第三項の規定により同条第一項第三号の決定の裁判書の謄本の送達を受けた日から十日以内に前項の規定による引渡の命令がないときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている逃亡犯罪人を釈放しなければならない。
 法務大臣は、第一項の規定により逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認める旨の通知をした後は、当該引渡請求につき逃亡犯罪人の引渡を命ずることができない。但し、第二条第八号の場合に関し引渡条約に別段の定がある場合において、同条同号に該当するため逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認める旨の通知をした後同条同号に該当しないこととなつたときは、この限りでない。

第十五条  前条第一項の引渡しの命令による逃亡犯罪人の引渡しの場所は、逃亡犯罪人が拘禁許可状により拘禁されている刑事施設とし、引渡しの期限は、引渡命令の日の翌日から起算して三十日目の日とする。ただし、逃亡犯罪人が引渡しの命令の日に拘禁されていないときは、引渡しの場所は、拘禁状により逃亡犯罪人を拘禁すべき刑事施設又は拘禁が停止されるまで逃亡犯罪人が拘禁されていた刑事施設とし、引渡しの期限は、逃亡犯罪人が拘禁状により拘束され、又は拘禁の停止の取消しにより拘束された日の翌日から起算して三十日目の日とする。

第十六条  第十四条第一項の規定による引渡の命令は、引渡状を発して行う。
 引渡状は、東京高等検察庁検事長に交付しなければならない。
 法務大臣は、引渡状を発すると同時に、外務大臣に受領許可状を送付しなければならない。
 引渡状及び受領許可状には、逃亡犯罪人の氏名、引渡犯罪名、請求国の名称、引渡の場所、引渡の期限及び発付の年月日を記載し、法務大臣が記名押印しなければならない。

第十七条  東京高等検察庁検事長は、法務大臣から引渡状の交付を受けた場合において、逃亡犯罪人が拘禁許可状により拘禁され、又はその拘禁が停止されているときは、逃亡犯罪人が拘禁され、又は停止されるまで拘禁されていた刑事施設の長に対し、引渡状を交付して逃亡犯罪人の引渡しを指揮しなければならない。
 前項に規定する場合を除き、東京高等検察庁検事長は、法務大臣から引渡状の交付を受けたときは、東京高等検察庁の検察官をして拘禁状により逃亡犯罪人を拘禁させなければならない。
 前項の拘禁状は、東京高等検察庁の検察官が発する。
 第六条及び第七条の規定は、拘禁状による逃亡犯罪人の拘束について準用する。
 東京高等検察庁検事長は、拘禁状により拘束された逃亡犯罪人が拘禁すべき刑事施設に送致されたときは、速やかに、その刑事施設の長に対し引渡状を交付して逃亡犯罪人の引渡しを指揮するとともに、法務大臣にその旨及び拘束した年月日を報告しなければならない。

第十八条  法務大臣は、東京高等検察庁検事長から前条第五項又は第二十二条第六項の規定による報告があつたときは、直ちに、外務大臣に対し、逃亡犯罪人を引き渡すべき場所に拘束した旨及び引渡の期限を通知しなければならない。

第十九条  外務大臣は、第十六条第三項の規定による受領許可状の送付を受けたときは、直ちに、これを請求国に送付しなければならない。
 外務大臣は、前条の規定による通知を受けたときは、直ちに、その内容を請求国に通知しなければならない。

第二十条  第十七条第一項又は第五項の規定による逃亡犯罪人の引渡しの指揮を受けた刑事施設の長は、請求国の官憲から受領許可状を示して逃亡犯罪人の引渡しを求められたときは、逃亡犯罪人を引き渡さなければならない。
 刑事施設の長は、引渡しの期限内に前項の規定による引渡しの求めがないときは、逃亡犯罪人を釈放し、その旨を東京高等検察庁検事長に報告しなければならない。

第二十一条  前条第一項の規定により、逃亡犯罪人の引渡を受けた請求国の官憲は、すみやかに、逃亡犯罪人を請求国内に護送するものとする。

第二十二条  東京高等検察庁の検察官は、必要と認めるときは、拘禁許可状により拘禁されている逃亡犯罪人を親族その他の者に委託し、又は逃亡犯罪人の住居を制限して、拘禁の停止をすることができる。
 東京高等検察庁の検察官は、必要と認めるときは、いつでも、拘禁の停止を取り消すことができる。第十七条第一項の規定により法務大臣から東京高等検察庁検事長に対して引渡状の交付があつたときは、拘禁の停止を取り消さなければならない。
 東京高等検察庁の検察官は、前項の規定により拘禁の停止を取り消したときは、検察事務官等に逃亡犯罪人の拘束をさせることができる。
 前項の規定による拘束は、拘禁許可状の謄本及び東京高等検察庁の検察官が作成した拘禁の停止を取り消した旨の書面を逃亡犯罪人に示した上、これを拘禁すべき刑事施設に引致して行う。
 前項の書面を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、同項の規定にかかわらず、逃亡犯罪人に対し拘禁の停止が取り消された旨を告げて、これを拘禁すべき刑事施設に引致することができる。ただし、その書面は、できる限り速やかに逃亡犯罪人に示さなければならない。
 東京高等検察庁検事長は、第二項後段の規定による拘禁の停止の取消しがあつた場合において、逃亡犯罪人が拘禁すべき刑事施設に送致されたときは、速やかに、法務大臣にその旨及び拘束した年月日を報告しなければならない。
 左の各号の一に該当するときは、停止されている拘禁は、その効力を失う。
 逃亡犯罪人に対し、第十条第一項第一号又は第二号の決定の裁判書の謄本が送達されたとき。
 逃亡犯罪人に対し、第十一条第二項の規定による通知があつたとき。
 逃亡犯罪人に対し、第十四条第一項の規定により、法務大臣から引き渡すことが相当でないと認める旨の通知があつたとき。

第二十三条  外務大臣は、引渡条約に基づき、締約国から引渡条約により日本国に対し引渡しの請求をすることができる犯罪人が犯した犯罪(引渡条約において締約国が日本国に対し犯罪人の引渡しを請求することができるものとして掲げる犯罪に限る。)についてその者を仮に拘禁することの請求があつたときは、次の各号の一に該当する場合を除き、その請求があつたことを証明する書面に関係書類を添付し、これを法務大臣に送付しなければならない。
 請求に係る者を逮捕すべき旨の令状が発せられ又は刑の言渡しがなされていることの通知がないとき。
 請求に係る者の引渡しの請求を行うべき旨の保証がなされないとき。
 引渡条約に基づかないで犯罪人を仮に拘禁することの請求があつたときは、当該請求をした外国から日本国が行う同種の請求に応ずべき旨の保証がなされた場合に限り、前項と同様とする。

第二十四条  法務大臣は、前条の規定による書面の送付を受けた場合において、当該犯罪人を仮に拘禁することを相当と認めるときは、東京高等検察庁検事長に対し、当該犯罪人を仮に拘禁すべき旨を命じなければならない。

第二十五条  東京高等検察庁検事長は、前条の規定による法務大臣の命令を受けたときは、東京高等検察庁の検察官をして、東京高等裁判所の裁判官があらかじめ発する仮拘禁許可状により、当該犯罪人を拘禁させなければならない。
 第五条第二項及び第三項、第六条並びに第七条の規定は、仮拘禁許可状による拘禁について準用する。

第二十六条  法務大臣は、仮拘禁許可状により拘禁されている犯罪人について、外務大臣から第三条の規定による引渡しの請求に関する書面の送付を受けた場合において、第四条第一項各号の一に該当するため同条同項の規定による命令をしないときは、東京高等検察庁検事長及び当該犯罪人にその旨を通知するとともに、東京高等検察庁検事長に対し、当該犯罪人の釈放を命じなければならない。
 東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による釈放の命令があつたときは、直ちに、当該犯罪人を釈放しなければならない。

第二十七条  東京高等検察庁検事長は、仮拘禁許可状が発せられている犯罪人について第四条第一項の規定による法務大臣の命令を受けたときは、直ちに、東京高等検察庁の検察官をして、当該犯罪人に対し引渡の請求があつた旨を告知させなければならない。
 前項の告知は、当該犯罪人が仮拘禁許可状により拘禁されている場合には、その刑事施設の長に通知して行い、拘禁されていない場合には、当該犯罪人に書面を送付して行う。
 仮拘禁許可状により拘禁されている犯罪人に対し第一項の規定による告知があつたときは、その拘禁は、拘禁許可状による拘禁とみなし、第八条第一項の規定の適用については、その告知があつた時に東京高等検察庁の検察官が拘禁許可状により逃亡犯罪人を拘禁したものとみなす。

第二十八条  外務大臣は、第二十三条の規定による書面の送付をした後に仮に拘禁することの請求をした国から当該犯罪人の引渡しの請求をしない旨の通知があつたときは、直ちに、その旨を法務大臣に通知しなければならない。
 法務大臣は、前項の規定による通知を受けたときは、直ちに、東京高等検察庁検事長及び当該犯罪人にその旨を通知するとともに、東京高等検察庁検事長に対し、当該犯罪人の釈放を命じなければならない。
 東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による釈放の命令があつたときは、直ちに、当該犯罪人を釈放しなければならない。

第二十九条  刑事施設の長は、仮拘禁許可状により拘禁されている犯罪人について、その者が拘束された日から二箇月(引渡条約に二箇月より短い期間の定めがあるときは、その期間)以内に第二十七条第二項の規定による通知を受けないときは、当該犯罪人を釈放し、その旨を東京高等検察庁検事長に報告しなければならない。

第三十条  第二十二条第一項から第五項までの規定は、仮拘禁許可状による拘禁に準用する。
 前項において準用する第二十二条第一項の規定により、仮拘禁許可状による拘禁の停止があつた場合において、当該犯罪人に対し第二十七条第一項の規定による告知がなされたときは、当該仮拘禁許可状による拘禁の停止は、第二十二条第一項の規定による拘禁の停止とみなす。
 第一項において準用する第二十二条第一項の規定により、仮拘禁許可状による拘禁の停止があつた場合において、次の各号の一に該当するときは、停止されている仮拘禁許可状による拘禁は、その効力を失う。
 当該犯罪人に対し、第二十六条第一項又は第二十八条第二項の規定による通知があつたとき。
 当該犯罪人が仮拘禁許可状により拘束された日から二箇月(引渡条約に二箇月より短い期間の定めがあるときは、その期間)以内に、当該犯罪人に対し第二十七条第一項の規定による告知がないとき。

第三十一条  この法律に定めるものの外、東京高等裁判所の審査に関する手続及び拘禁許可状又は仮拘禁許可状の発付に関する手続について必要な事項は、最高裁判所が定める。

第三十二条  この法律に定める東京高等裁判所若しくはその裁判官又は東京高等検察庁の検察官の職務の執行に関しては、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律 (昭和二十二年法律第六十三号)の規定にかかわらず、東京高等裁判所には、管轄区域の定がないものとする。

第三十三条  日本国と外国との間に新たに引渡条約が締結された場合においては、引渡条約に締約国が日本国に対し当該引渡条約の効力発生前に犯された犯罪については犯罪人の引渡を請求することができない旨の定がある場合を除き、この法律中引渡条約に基づく引渡しの請求に関する規定は、当該引渡条約の効力発生前に犯された犯罪につきその効力発生後になされた引渡の請求に関しても、適用されるものとする。

第三十四条  法務大臣は、外国から外交機関を経由して当該外国の官憲が他の外国から引渡しを受けた者を日本国内を通過して護送することの承認の請求があつたときは、次の各号の一に該当する場合を除き、これを承認することができる。
 請求に係る者の引渡しの原因となつた行為が日本国内において行われたとした場合において、当該行為が日本国の法令により罪となるものでないとき。
 請求に係る者の引渡しの原因となつた犯罪が政治犯罪であるとき、又は当該引渡しの請求が政治犯罪について審判し、若しくは刑罰を執行する目的で行われたものと認められるとき。
 請求が引渡条約に基づかないで行われたものである場合において、請求に係る者が日本国民であるとき。
 法務大臣は、前項の承認をするかどうかについてあらかじめ外務大臣と協議しなければならない。

行政手続法 等の適用除外)
第三十五条  この法律に基づいて行う処分については、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第三章 の規定は、適用しない。
 この法律に基づいて行う処分(行政事件訴訟法 (昭和三十七年法律第百三十九号)第三条第二項 に規定する処分をいう。)又は裁決(同条第三項 に規定する裁決をいう。)に係る抗告訴訟(同条第一項 に規定する抗告訴訟をいう。)については、同法第十二条第四項 及び第五項 (これらの規定を同法第三十八条第一項 において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。

   附 則 抄

 この法律は、昭和二十八年七月二十二日から施行する。
 逃亡犯罪人引渡条例(明治二十年勅令第四十二号)は、廃止する。
 この法律は、この法律の施行前に犯された引渡犯罪に関する逃亡犯罪人の引渡の請求についても、適用する。

   附 則 (昭和二九年六月八日法律第一六三号) 抄

(施行期日)
 この法律中、第五十三条の規定は交通事件即決裁判手続法の施行の日から、その他の部分は、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号。同法附則第一項但書に係る部分を除く。)の施行の日から施行する。

   附 則 (昭和三九年五月二九日法律第八六号) 抄

(施行期日)
 この法律は、公布の日から施行する。
(経過規定)
 この法律による改正後の逃亡犯罪人引渡法の規定は、この法律の施行前に犯された犯罪に係る犯罪人の引渡しの請求についても、適用する。

   附 則 (昭和五三年六月一三日法律第七〇号)

(施行期日)
 この法律は、公布の日から施行する。
(経過規定)
 この法律による改正後の逃亡犯罪人引渡法の規定は、この法律の施行前に犯された犯罪に係る犯罪人の引渡し及び通過護送の承認の請求についても、適用する。

   附 則 (平成五年一一月一二日法律第八九号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、行政手続法(平成五年法律第八十八号)の施行の日から施行する。

(諮問等がされた不利益処分に関する経過措置)
第二条  この法律の施行前に法令に基づき審議会その他の合議制の機関に対し行政手続法第十三条に規定する聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続に相当する手続を執るべきことの諮問その他の求めがされた場合においては、当該諮問その他の求めに係る不利益処分の手続に関しては、この法律による改正後の関係法律の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(罰則に関する経過措置)
第十三条  この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(聴聞に関する規定の整理に伴う経過措置)
第十四条  この法律の施行前に法律の規定により行われた聴聞、聴問若しくは聴聞会(不利益処分に係るものを除く。)又はこれらのための手続は、この法律による改正後の関係法律の相当規定により行われたものとみなす。

(政令への委任)
第十五条  附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。

   附 則 (平成一六年六月九日法律第八四号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(検討)
第五十条  政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

   附 則 (平成一七年五月二五日法律第五〇号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(検討)
第四十一条  政府は、施行日から五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

   附 則 (平成一九年五月一一日法律第三七号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、規程が日本国について効力を生ずる日から施行する。