接収不動産に関する借地借家臨時処理法

接収不動産に関する借地借家臨時処理法
(昭和三十一年六月八日法律第百三十八号)


最終改正:平成二三年五月二五日法律第五三号

第一条  この法律は、旧連合国占領軍又は日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定若しくは日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定を実施するため日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊若しくは日本国に駐留する国際連合加盟国の軍隊等に接収された土地又は建物に関し、その接収の解除後における借地借家関係を調整するための措置を定めることを目的とする。

第二条  この法律において「接収」とは、旧連合国占領軍の用に供するためにした次に掲げる行為及びこれに基いて旧連合国占領軍又は日本国との平和条約の効力発生後、旧連合国占領軍に引き続いて前条に規定する駐留軍隊等が、その用に供したことをいう。
 旧土地工作物使用令(昭和二十年勅令第六百三十六号)により、国が土地又は建物を使用した行為
 国が土地又は建物をその所有者又は借地権者若しくは建物の賃借権者から賃借した行為
 旧連合国占領軍が土地又は建物をその所有者又は借地権者若しくは建物の賃借権者から直接その占有に移した行為
 この法律において「接収の解除」とは、接収された土地又は建物をその所有者又は借地権者若しくは建物の賃借権者に返還することをいう。
 この法律において「借地権」とは、建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいい、「借地権者」とは、借地権を有する者をいう。

第三条  土地が接収された当時におけるその土地の借地権者で、その土地の接収中にその借地権が存続期間の満了によつて消滅した者は、その土地又はその換地に借地権(第三者に対抗することのできない借地権及び臨時設備その他一時使用のために設定されたことの明らかな借地権を除く。)の存しない場合には、その土地の所有者に対し、この法律施行の日(この法律施行後接収の解除があつたときは、接収の解除の公告の日。以下同じ。)から六箇月以内に建物所有の目的で賃借の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な借地条件で、かつ、賃借権の設定の対価を支払うことが相当でない場合を除き、相当な賃借権の設定の対価で、その土地を賃借することができる。ただし、その土地を権原により建物所有の目的で使用する者があるとき、又は他の法令により、その土地に建物を築造するについて許可を必要とする場合に、その許可がないときは、その申出をすることができない。
 土地が接収された当時から引き続きその土地に借地権を有する者で、その土地にある当該借地権者の所有に属する登記した建物が接収中に滅失(接収の際における除却を含む。以下同じ。)したため、その借地権をもつてこの法律施行の日までにその土地について権利を取得した第三者に対抗することができない者は、その土地又はその換地に借地権(第三者に対抗することのできない借地権及び臨時設備その他一時使用のために設定されたことの明らかな借地権を除く。)の存しない場合には、その土地の所有者に対し、この法律施行の日から六箇月以内に建物所有の目的で賃借の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な借地条件で、かつ、賃借権の設定の対価を支払うことが相当でない場合を除き、相当な賃借権の設定の対価で、その土地を賃借することができる。この場合には、前項ただし書の規定を準用する。
 土地所有者は、第一項又は前項の申出を受けた日から三週間以内に、拒絶の意思を表示しないときは、その期間満了の時、その申出を承諾したものとみなす。
 土地所有者は、建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合その他正当な事由があるのでなければ、第一項又は第二項の申出を拒絶することができない。
 第一項又は第二項に規定する借地権者の借地権が接収された当時において第三者に対抗することのできない借地権又は臨時設備その他一時使用のために設定されたことの明らかな借地権であるときは、これらの規定は、適用しない。
 第一項又は第二項の規定により設定された賃借権の存続期間は、借地借家法 (平成三年法律第九十号)第三条 (借地権の存続期間)の規定にかかわらず、二十年とする。ただし、建物が、この期間満了前に朽廃したときは、賃借権は、これによつて消滅する。
 当事者は、前項に規定する存続期間について、同項の規定にかかわらず、その合意により、別段の定をすることができる。ただし、存続期間を二十年未満とする借地条件は、これを定めないものとみなす。
 第一項又は第二項の規定により設定された賃借権は、その登記及びその土地にある建物の登記がなくても、これをもつてこの法律施行の日から二年以内にその土地について権利を取得した第三者に対抗することができる。

第四条  土地が接収された当時におけるその土地の借地権者で、その土地の接収中にその借地権が存続期間の満了によつて消滅した者は、その土地又はその換地に借地権(第三者に対抗することのできない借地権及び臨時設備その他一時使用のために設定されたことの明らかな借地権を除く。)の存する場合には、その借地権者(借地権者が更に借地権を設定した場合には、その借地権の設定を受けた者)に対し、この法律施行の日から六箇月以内にその者の有する借地権の譲渡の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な対価で、その借地権の譲渡を受けることができる。
 土地が接収された当時から引き続きその土地に借地権を有する者で、その土地にある当該借地権者の所有に属する登記した建物が接収中に滅失したため、その借地権をもつてこの法律施行の日までにその土地について権利を取得した第三者に対抗することができない者は、その土地又はその換地に借地権(第三者に対抗することのできない借地権及び臨時設備その他一時使用のために設定されたことの明らかな借地権を除く。)の存する場合には、その借地権者(借地権者が更に借地権を設定した場合には、その借地権の設定を受けた者)に対し、この法律施行の日から六箇月以内にその者の有する借地権の譲渡の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な対価で、その借地権の譲渡を受けることができる。
 前条第一項ただし書、第三項から第五項まで及び第八項並びに第九条の規定は、前二項の場合に準用する。この場合において、第九条中「この法律施行の日」とあるのは「借地権の譲渡を受けた日(その借地権の譲渡について裁判又は調停があつたときは、その裁判が確定した日又はその調停が成立した日)」と読み替えるものとする。

第五条  前条の規定により賃借権が譲渡された場合には、その譲渡について賃貸人の承諾があつたものとみなす。この場合には、譲受人は、譲渡を受けたことを、直ちに賃貸人に通知しなければならない。

第六条  第三条の規定により賃借権の設定を受け、又は第四条の規定により借地権の譲渡を受けた者が、その後(その賃借権の設定又は借地権の譲渡について裁判又は調停があつたときは、その裁判が確定した後又はその調停が成立した後)六箇月を経過しても、正当な事由がなくて、建物所有の目的でその土地の使用を始めなかつたときは、土地所有者又は借地権の譲渡人は、その賃借権の設定契約又は借地権の譲渡契約を解除することができる。ただし、その解除前にその使用を始めたときは、この限りでない。
 第三条の規定により賃借権の設定を受け、又は第四条の規定により借地権の譲渡を受けた者が、建物所有の目的でその土地の使用を始めた後、建物の完成前にその使用を止めた場合にも、前項と同様である。

第七条  第三条の規定による賃借権の設定又は第四条の規定による借地権の譲渡があつたときは、賃貸人又は借地権の譲渡人は、借賃の全額及び賃借権の設定の対価又は借地権の譲渡の対価について、当該賃借権の設定又は借地権の譲渡を受ける者がその土地に所有する建物の上に、先取特権を有する。
 前項の先取特権は、借賃については、その額及び、もし存続期間若しくは借賃の支払時期の定があるときはその旨、又はもし弁済期の来た借賃があるときはその旨、賃借権の設定の対価又は借地権の譲渡の対価については、その対価の弁済されない旨を登記することによつて、その効力を保存する。
 第一項の先取特権は、他の権利に対し、優先の効力を有する。ただし、民法 (明治二十九年法律第八十九号)に規定する共益費用、不動産保存又は不動産工事の先取特権並びに前項の登記前に登記した質権及び抵当権に後れる。

第八条  土地が接収された当時から引き続きその土地に借地権を有する者で、その土地にある当該借地権者の所有に属する登記した建物が接収中に滅失したため、その借地権をもつて第三者に対抗することができない者は、その借地権の登記及びその土地にある建物の登記がなくても、これをもつてこの法律施行の日から一年以内にその土地について権利を取得した第三者に対抗することができる。

第九条  土地が接収された当時から引き続きその土地に借地権を有する者の当該借地権の残存期間が、この法律施行の日において一年未満のときは、これをこの法律施行の日から一年とする。
 土地が接収された当時から引き続きその土地に借地権を有する者で、その土地にある当該借地権者の所有に属する建物が接収中に滅失した者については、その者がこの法律施行の日以後一年以内に建物を築造した場合においては、借地法第四条(更新の請求)の規定を準用し、同法第七条(建物の滅失の場合の法定更新)の規定は、適用がないものとする。

第十条  土地所有者は、この法律施行の日から六箇月以内に、第八条に規定する借地権者(接収の後更に借地権を設定している者を除く。)に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内に、借地権を存続させる意思があるかないかを申し出るように、催告することができる。もし、借地権者が、その期間内に、借地権を存続させる意思があることを申し出ないときは、その期間満了の時、借地権は、消滅する。ただし、借地権者が更に借地権を設定している場合には、各借地権は、すべての借地権者が、その申出をしないときに限り消滅する。
 前項の催告は、土地所有者が、借地権者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法で、これをすることができる。
 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示のあつたことを新聞紙に二回掲載して、これを行う。
 公示に関する手続は、接収された土地の所在地の地方裁判所の管轄に属する。
 第二項の場合には、民法第九十八条 (公示による意思表示)第三項 及び第五項 の規定を準用する。

第十一条  借地権者が更に借地権を設定している場合に、その借地権を設定している者については、前条の規定を準用する。

第十二条  第三条(第二項を除く。)、第四条(第二項を除く。)及び第五条から第七条までの規定は、罹災都市借地借家臨時処理法(昭和二十一年法律第十三号)第九条の疎開建物の敷地の借地権者であつて、昭和二十三年九月十四日現在において当該疎開建物の敷地が接収中であつた者に準用する。この場合において、第三条第一項本文中「賃借権の設定の対価を支払うことが相当でない場合を除き、相当な賃借権の設定の対価で、」とあるのは「相当な賃借権の設定の対価で、」と読み替えるものとする。
 前項の規定は、昭和二十三年九月十四日までに罹災都市借地借家臨時処理法第九条において準用する同法第二条の規定による賃借の申出又は同法第九条において準用する同法第三条の規定による借地権の譲渡の申出をした者については、これを適用しない。

第十三条  建物が接収された当時から引き続きその建物の賃借権を有する者で、接収によりその建物の占有をそう失したため、その賃借権をもつてこの法律施行の日までにその建物について権利を取得した第三者に対抗することができない者は、その建物の所有者に対し、この法律施行の日から六箇月以内に賃借の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な借家条件で、その建物を賃借することができる。ただし、その建物を権原により使用する者があるときは、その申出をすることができない。
 第三条第三項及び第四項の規定は、前項の場合に準用する。
 第一項の規定により設定された賃借権は、その登記及びその建物の引渡がなくても、これをもつてこの法律施行の日から一年以内にその建物について権利を取得した第三者に対抗することができる。

第十四条  建物が接収された当時から引き続きその建物の賃借権を有する者で、接収によりその建物の占有をそう失したため、その賃借権をもつて、第三者に対抗することができない者は、その建物の賃借権の登記及びその建物の引渡がなくても、これをもつてこの法律施行の日から六箇月以内にその建物について権利を取得した第三者に対抗することができる。

第十五条  第十条の規定は、建物所有者に準用する。この場合において、「第八条に規定する借地権者」とあるのは「第十四条に規定する建物の賃借権者」と、「借地権」とあるのは「建物の賃借権」と、「借地権者」とあるのは「建物の賃借権者」と読み替えるものとする。
 前項の規定は、建物の賃借権者が更に賃借権を設定している場合に、その賃借権を設定している者に準用する。

第十六条  第三条(第十二条において準用する場合を含む。)の規定により賃借権の設定を受け、又は第四条(第十二条において準用する場合を含む。)の規定により借地権の譲渡を受けた者は、権原によりその土地を使用していた者及びその他の者に対し、工作物の移転料その他当該賃借権の設定又は当該借地権の譲渡によりその者が通常受けるべき損失を補償しなければならない。

第十七条  第三条又は第十二条に規定する借地条件及び賃借権の設定の対価、第十三条に規定する借家条件又は第四条(第十二条において準用する場合を含む。)に規定する対価について、当事者間に、協議がととのわないときは、申立により、裁判所は、鑑定委員会の意見を聞き、土地又は建物の状況その他一切の事情を参しやくして、これを定めることができる。

第十八条  第三条(第十二条において準用する場合を含む。)若しくは第十三条の規定による賃借の申出又は第四条(第十二条において準用する場合を含む。)の規定による借地権の譲渡の申出をした者が数人ある場合に、賃借しようとする土地若しくは建物又は譲渡を受けようとする借地権の目的である土地の割当について、当事者間に協議がととのわないときは、裁判所は、申立により、土地又は建物の状況、土地若しくは建物の賃借権者又は譲受人の職業その他一切の事情を参しやくして、その割当をすることができる。
 裁判所は、当事者間の衡平を維持するため必要があると認めるときは、割当を受けない者又は著しく不利益な割当を受けた者のために、著しく利益な割当を受けた者に対し、相当な給付を命ずることができる。

第十九条  第十七条又は前条の規定による裁判は、接収された土地又は建物の所在地を管轄する地方裁判所が非訟事件手続法 (平成二十三年法律第五十一号)により、これをする。

第二十条  第十七条に規定する鑑定委員会については、罹災都市借地借家臨時処理法第十九条から第二十二条まで(鑑定委員会)の規定を準用する。

第二十一条  削除

第二十二条  第十七条又は第十八条の規定による裁判に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。

第二十三条  第十七条又は第十八条の規定による裁判は、裁判上の和解と同一の効力を有する。

第二十四条  地方防衛局長は、接収された土地又は建物について、接収の解除があつたときは、遅滞なく、官報をもつてその旨を公告しなければならない。
 前項の公告は、これを掲載した官報の発行の日の翌日にしたものとみなす。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。
 第七条の規定によりまだ弁済期の来ない借賃につき先取特権に関する登記を受ける場合におけるその登記に係る登録免許税の課税標準は、登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)に第九条の規定にかかわらず、賃貸借の存続期間における借賃の全額から、すでに弁済期の来た借賃の額を控除した金額とする。

   附 則 (昭和三四年四月二〇日法律第一四八号) 抄

(施行期日)
 この法律は、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)の施行の日から施行する。
(公課の先取特権の順位の改正に関する経過措置)
 第二章の規定による改正後の各法令(徴収金の先取特権の順位に係る部分に限る。)の規定は、この法律の施行後に国税徴収法第二条第十二号に規定する強制換価手続による配当手続が開始される場合について適用し、この法律の施行前に当該配当手続が開始されている場合における当該法令の規定に規定する徴収金の先取特権の順位については、なお従前の例による。

   附 則 (昭和三五年六月二三日法律第一〇二号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の効力発生の日から施行する。

   附 則 (昭和三七年五月一五日法律第一三二号) 抄

(施行期日)
 この法律は、公布の日から起算して十月をこえない範囲内において、各規定につき、政令で定める日から施行する。

   附 則 (昭和四二年六月一二日法律第三六号) 抄

 この法律は、登録免許税法の施行の日から施行する。

   附 則 (平成三年一〇月四日法律第九〇号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

   附 則 (平成八年六月二六日法律第一一〇号) 抄

 この法律は、新民訴法の施行の日から施行する。
   附 則 (平成一六年一二月一日法律第一四七号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

   附 則 (平成一九年六月八日法律第八〇号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

   附 則 (平成二三年五月二五日法律第五三号)

 この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。