婦人補導院処遇規則¶
昭和三十三年法務省令第八号
婦人補導院処遇規則
婦人補導院法(昭和三十三年法律第十七号)第三条、第四条、第十条、第十二条第一項、第十五条第一項及び第二十一条第一項の規定にもとづき、並びに同法を施行するため、婦人補導院処遇規則を次のように定める。
第一章 総則
(この規則の趣旨)
第一条 この規則は、婦人補導院の在院者の処遇を適正に行うため必要な事項を定めるものとする。
(処遇の方針)
第二条 婦人補導院の職員(以下「職員」という。)は、在院者の処遇にあたり、明るい環境のもとで在院者がすすんで更生に励むように、理解ある態度をもつて親切に接しなければならない。
(職員)
第三条 在院者の処遇にあたる職員は、なるべく婦人とし、かつ、補導に必要な研修訓練を受けた者でなければならない。
(処遇審査会議)
第四条 婦人補導院の長(以下「院長」という。)は、在院者の分類級、補導の計画、仮退院を許すべき旨の申出その他処遇に関し重要な事項を決定するにあたつては、処遇審査会議の意見を聞かなければならない。
2 処遇審査会議の組織その他必要な事項は、法務大臣が定める。
第二章 入院
(入院時の必要文書)
第五条 入院は、収容状その他の適法の文書によるものとする。
(伝染病患者の入院)
第六条 院長は、入院すべき者が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)により予防方法の施行を必要とする疾病にかかつているときは、直ちに、この旨を検察官に通報するとともに、保健所等への通報その他その者を適当な病院等に入院させるに必要な処置をとらなければならない。
(身体検査等)
第七条 入院した者については、入院後直ちに、その身体、衣類及び所持品を検査しなければならない。
2 前項の処置は、婦人の職員が行うものとする。
(健康診断等)
第八条 あらたに入院した者については、健康診断を行い、入浴をさせ、かつ、予防衛生上必要な処置をとらなければならない。
(入院時の説示)
第九条 院長は、あらたに入院した者に対し、婦人補導院の使命、日課及び行事の概要その他必要な事項を説示し、かつ、本人に信頼感と希望をいだかせるように努めなければならない。
第三章 分類処遇
(入院時の分類調査)
第十条 あらたに入院した者については、すみやかに分類調査を行わなければならない。その期間は、おおむね二十日とする。
2 前項の調査は、医学、精神医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識を活用して行わなければならない。
3 第一項の調査にあたつては、在院者の行動についての職員の記録を資料としなければならない。
4 院長は、第一項の調査にあたり、裁判所、検察庁、保護観察所、婦人保護施設その他の関係機関から資料を得ることに努めなければならない。
(調査期間中の処遇)
第十一条 前条第一項の調査期間中の者は、調査後の在院者と接触させないようにしなければならない。
2 院長は、前項の調査期間中の者に対し、その個性の発現を妨げないように特別の日課を定めなければならない。
(分類級の決定)
第十二条 院長は、第十条の規定による調査を終了したときは、すみやかに、在院者の分類級及び補導の計画を定めなければならない。
2 在院者の分類級は、少くとも次に掲げる四の級を含むものとする。
一 疾病により療養を要する者
二 知的障害者
三 性格異常者
四 心身ともにおおむね正常な者
3 院長は、補導の計画をなるべく在院者に知らせて本人の努力を促すとともに、保護者及び関係機関に知らせることによつて、その協力を得ることに努めなければならない。
(分類級による処遇)
第十三条 在院者の処遇は、分類級に応じて定めた補導の計画にもとづいて行わなければならない。
2 第十二条第二項に掲げる分類級に対する補導の計画は、同項各号に掲げる級に応じ、それぞれ、次に掲げる事項を重点としなければならない。
一 更生の妨げとなる疾病に対する医療を行うこと。
二 特殊教育により精神的欠陥を補整し、及び能力に応じた技能を付与すること。
三 心理療法及び作業療法により社会適応性を養わせること。
四 基礎的教養を授け、及び自活するための職業的能力を付与すること。
3 分類級による処遇については、これを二期に分け、後の期の者には、自治的生活をさせその他分類級にふさわしい向上した取扱をするものとする。
(分類再調査等)
第十四条 院長は、少くとも毎月一回、在院者の分類調査を行つてその結果を審査し、必要と認めるときは、分類級又は補導の計画を変更しなければならない。
2 職員は、在院者に対する補導の計画を熟知し、その日常の行動を細かく観察して、前項の調査に資さなければならない。
(収容区分)
第十五条 在院者は、分類級の別に従つて、なるべく区分して収容するものとする。
(居室)
第十六条 居室の指定は、分類調査の結果にもとづかなければならない。
2 在院者は、特に必要のある場合のほか、共同の居室に収容する。
第四章 補導
(日課)
第十七条 院長は、在院者の分類級、期別及び補導の計画に応じた日課を定めなければならない。
(生活指導)
第十八条 生活指導は、次の各号に掲げる事項について行うものとする。
一 社会に適応する性格を育成し、かつ、性道徳を自覚させその他婦人としての徳性を養わせること。
二 家事、保健その他婦人に必要な知識又は技能を与え、かつ、これを活用する習慣を養わせること。
三 職業に関する知識を与え、勤労に親しませ、かつ、正しい生活態度を身につけさせること。
四 視聴覚教育、レクリエーシヨン等を通じて婦人としての情操を豊かにさせること。
五 その他社会生活に必要な素養を与えること。
(生活指導の方法)
第十九条 在院者の生活指導は、相談、助言その他の方法による個別指導及び集団指導とする。
(篤志面接指導の委嘱)
第二十条 院長は、学識経験のある篤志家に在院者に対する面接による指導を委嘱することができる。
(自己の図書の閲読)
第二十一条 在院者には、管理上支障がない限り、自己の図書、雑誌及び新聞紙を閲読させるものとする。
(宗教)
第二十二条 院長は、在院者が宗教行事を行い、又はこれに参加することを願い出たときは、管理上支障がない限り、これを許さなければならない。
(職業の補導の種目)
第二十三条 職業の補導は、在院者の適性、希望及び将来の生計の見込により適当と認められる種目について行うものとする。
(賞与金の計算等)
第二十四条 職業の補導を受けた者に対する賞与金(以下「賞与金」という。)は、職業の補導の種目、成績等により、法務大臣の別に定めるところに従つて計算しなければならない。
2 賞与金は、退院又は仮退院の時に支給する。
3 院長は、在院者がその子又は親の扶助その他やむを得ない用途に使うことを願い出たときは、その賞与金の一部を在院中に支給することができる。
(手当金の種類等)
第二十五条 婦人補導院法(昭和三十三年法律第十七号。以下「法」という。)第十二条の規定による手当金は、次の三種とする。
一 死亡手当金
二 障害手当金
三 傷病手当金
2 前項の手当金は、死亡又は傷病の原因、障害又は傷病の程度その他の事情を参酌して、法務大臣の定めるところにより支給するものとする。
(院外補導の監督)
第二十六条 院長は、職業の補導のため在院者を単独で院外に出す場合には、職員に随時視察をさせる等適当な監督の方法を講じなければならない。
(自己労作)
第二十七条 院長は、在院者に自己労作を行わせるにあたつては、その適性及び将来の生計を参酌して、適当なものを選択するよう助言しなければならない。
2 自己労作は、補導上支障を生じないように行わせるものとする。
第五章 給養
(被服及び寝具の基準)
第二十八条 在院者に貸与する被服及び寝具の種類、数量及び製式の基準は、法務大臣が定める。
(糧食及び飲料の給与)
第二十八条の二 在院者に給与する糧食及び飲料は、保健衛生上適切なものでなければならない。
(糧食の基準)
第二十八条の三 院長は、在院者に対し、法務大臣が別に定める糧食の一人一日当たりの熱量等の基準に従い、これを給与するものとする。
(湯茶の給与)
第二十八条の四 院長は、在院者に対し、飲料として、湯茶を給与するものとする。
(医師の意見による糧食及び飲料の給与)
第二十八条の五 院長は、在院者の健康の保持上特に必要があると認める場合又は在院者に対して治療を施している場合には、前二条の規定によらない糧食及び飲料を給与することができる。
2 院長は、前項に規定する糧食及び飲料を給与しようとする場合には、あらかじめ、医師の意見を聴くものとする。
(特別の糧食及び飲料の給与)
第二十八条の六 祝日(国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)第二条に規定する国民の祝日をいう。)並びに一月二日及び三日には、院長は、第二十八条の三及び第二十八条の四の規定にかかわらず、特別の糧食及び飲料を給与することができる。
2 前項に規定する日のほか、婦人補導院において特別な行事を行う場合及び在院者の処遇上適当と認められる場合も、同項と同様とする。
(酒類及びたばこの使用禁止)
第二十九条 在院者は、酒類及びたばこを用いることができない。
第六章 衛生及び医療
(保健衛生の管理)
第三十条 院長は、在院者の心身の健康を保護し、及び居室、炊事場等の清潔を保持するため、医師の意見により、適切な処置をとらなければならない。
2 健康診断、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)に定める感染症の予防その他在院者の健康管理の基準は、法務大臣が定める。
(病院等への移送)
第三十一条 院長は、婦人補導院で適当な医療を施すことができないときは、在院者を一時病院又は診療所に入れて医療を受けさせることができる。
2 分べんは、病院、診療所又は助産所において行わせるものとする。
(自費治療等)
第三十二条 院長は、在院者が自費で医療を願い出たときは、医師の意見を聞いて、これを許すことができる。
2 在院者が自費による薬剤の使用を願い出たときも、前項と同様とする。
(入浴、整髪)
第三十三条 在院者には、一週間に少くとも二回、入浴させるものとする。
2 在院者には、つねに、その頭髪の清潔を保たせ、かつ、これを見苦しくないように整えさせなければならない。
第七章 外部との交通
(面会の立会)
第三十四条 院長は、在院者の面会にあたり、管理上必要と認めるときは、職員をこれに立ち会わせることができる。
(通信の検査)
第三十五条 法第八条第二項の規定により通信の内容を検査する場合には、分類調査の記録その他の資料によつて、通信の相手方と本人との関係等その理由を明らかにしなければならない。
(検査の理由等の記録)
第三十六条 院長は、在院者の発受する通信の内容を検査したときは、その理由を記録しておかなければならない。
2 検査により通信の内容を削除した場合において、その内容及び理由についても、前項と同様とする。
(通信に要する費用)
第三十七条 在院者の通信に要する費用は、本人の負担とする。ただし、本人がこれを負担することができないときは、国が支弁することができる。
(臨時外出の理由)
第三十八条 院長が在院者に臨時外出を許すにあたつては、次の各号の一に掲げる理由がなければならない。
一 在院者の近親者又は保護者が死亡し、又は重病にかかつたとき。
二 火災その他の非常災害により、在院者又は前号に掲げる者の住居又は家財に著しい損害があつたとき。
三 その他在院者が出向かなければ本人に回復できない不利益を生ずるおそれがあるとき。
(臨時外出の監督)
第三十九条 在院者の臨時外出にあたつては、職員をこれに同伴させなければならない。ただし、院長が適当と認めるときは、単独で外出させることができる。
(臨時外出の費用)
第四十条 臨時外出の費用は、在院者の負担とする。ただし、本人に負担する能力がないときは、これを国が支弁することができる。
第八章 賞罰
(賞の種類等)
第四十一条 賞は、賞状、賞票及び賞金の三種とする。
2 賞金を与える場合、その額の範囲その他賞金の授与の基準は、法務大臣が定める。
3 院長は、適当と認めるときは、賞金に替えて賞品を与えることができる。
4 第一項の賞は、あわせて与えることができる。
(遵守事項)
第四十二条 法第十一条第一項の遵守すべき事項は、次のとおりとする。
一 法又はこの規則によりとられた処置に従うこと。
二 院長が特に定める事項に従うこと。
三 その他規律維持のため職員の指示する事項に従うこと。
2 前項の遵守すべき事項は、在院者に周知させなければならない。
(懲戒の言渡)
第四十三条 懲戒の言渡は、院長がみずから行わなければならない。
(謹慎の執行)
第四十四条 法第十一条第一項第二号の規定による謹慎の懲戒を執行中の者については、院長は、その心身の状況に留意し、特別の日課による補導を行わなければならない。
第九章 領置
(所持物等の記録)
第四十五条 在院者が所持し、又は在院者にあてて送付された物については、本人を立ち会わせて点検し、その品目、数量その他の必要な事項を記録しなければならない。
(領置物の保管)
第四十六条 在院者の領置物の保管については、洗濯、消毒その他適当な処置をとらなければならない。
(領置物の交付)
第四十七条 領置物は、退院又は仮退院の際に交付する。
2 院長は、在院者がその領置物を正当な用途に使うことを願い出たときは、これを許すことができる。
第十章 退院及び仮退院
(退院)
第四十八条 退院は、補導処分の期間満了の翌日午前中に行うものとする。
第四十九条 削除
(仮退院の通知)
第五十条 院長は、地方更生保護委員会から仮退院の決定書の謄本又は犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則(平成二十年法務省令第二十八号)第六条第二項に規定する方法により送付された決定書の写しを受け取つたときは、速やかに、仮退院の日時その他必要な事項を近親者その他の保護を引き受ける者に通知しなければならない。
(帰住旅費)
第五十一条 法第十八条の規定により給与する旅費は、帰住地までの旅行に要する実費とする。この場合においては、運賃の代りに乗車券又は乗船切符を支給することができる。
第十一章 雑則
(保護)
第五十二条 院長は、つねに在院者の保護関係に留意し、その社会復帰を円滑にするため必要があると認めるときは、保護観察所の長にその者の生活環境の調整に関する処置を求めなければならない。
(子の保育)
第五十三条 院長は、法第十七条の規定により在院者に子の保育を許す場合には、特に母子を収容する居室を設け、これに収容しなければならない。
2 在院者の補導中は、その子を特に設けた保育室に収容しなければならない。
(子の引渡の措置)
第五十四条 院長は、在院者に子の保育を許した場合においても、適当な保護者にその子を引き取ることを連絡し、又は児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)による措置をとることに留意しなければならない。
(保護具の使用)
第五十五条 院長は、保護具を使用したときは、直ちに、その使用について、医師の意見を聞かなければならない。
2 保護具の使用について、院長の許可を受けるいとまのなかつたときは、使用後直ちに院長に報告して、その承認を得なければならない。
3 保護具の使用中は、被使用者に対する観察を励行し、その使用の必要がなくなつたときは、直ちに使用をやめなければならない。
4 保護具を使用した場合には、使用の理由、開始及び解除の日時、使用中の動静その他必要な事項を記録しなければならない。
(面接)
第五十六条 院長は、在院者から処遇又は一身上の事情に関する申立を聞くため、随時、在院者に面接するように努めなければならない。
(不服申立)
第五十七条 在院者は、院長のとつた処置について不服があるときは、法務大臣又は矯正管区の長に書面をもつて申立をすることができる。
(連戻しの援助を求める手続)
第五十八条 院長は、連戻しについて警察官に援助を求めるには、書面によらなければならない。ただし、緊急を要するときは、口頭その他適当な方法によることができる。この場合においては、援助を求める旨の書面をできる限りすみやかに送付しなければならない。
(死亡の通知、仮埋葬)
第五十九条 在院者が死亡したときは、病名、死因及び死亡の日時をすみやかに近親者又はその他適当と認める者に通知し、遺体を引き取らせなければならない。
2 前項の場合において、引取人がないときは、葬儀の上、仮に埋葬しなければならない。
(遺留金品の交付)
第六十条 法第十九条第一項の遺留金品については、すみやかにこれを本人の遺族に交付するように努めなければならない。
附 則
この省令は、公布の日から施行する。
附 則 (昭和四九年六月二八日法務省令第五二号) 抄
(施行期日)
1 この省令は、昭和四十九年七月一日から施行する。
附 則 (平成一一年三月三〇日法務省令第二四号)
この省令は、平成十一年四月一日から施行する。
附 則 (平成一四年一二月二五日法務省令第六二号)
この省令は、平成十五年一月一日から施行する。
附 則 (平成二〇年五月三〇日法務省令第四〇号)
この省令は、更生保護法(平成十九年法律第八十八号)の施行の日(平成二十年六月一日)から施行する。
附 則 (令和六年三月二二日法務省令第一〇号)
この省令は、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の施行の日(令和六年四月一日)から施行する。